漢字に選択的障害を呈した失読失書の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
漢字に選択的な失読失書と視覚心像の障害とを呈した1失名詞失語症者(H.Y.,発症時53歳,大卒,左角回を含むT-P-O移行部損傷)について,漢字の使用頻度と表意性を統制して作成した熟語検査を実施し,漢字障害の性質を検討した.その後,対照例の成績と比較し,以下の結果が得られた.(1) 本症例の漢字の音読・書字力は対照例と比較して,正答率と反応時間の点で明らかに低下していた.また,抽象的な漢字ではなく,使用頻度の低い字での困難が著明であった.(2) 音読の誤反応の分析から,本症例の音読の困難は意味レベルの障害ではなく,漢字からその音価を引き出せない,視覚-聴覚連合の障害によることが示唆された.(3) 書字反応の分析及び関連する諸検査の結果,本症例の反応の一部には特異な誤りが見出され,本症例の書字障害には,聴覚入力による文字の想起の障害と,文字の視覚心像自体の障害とが加わっていることが推測された.
著者
-
河内 十郎
東京大学教育学部
-
竹内 愛子
七沢リハビリテーション病院脳血管センター
-
高橋 真知子
七沢リハビリテーション病院 脳血管センター 言語科
-
竹内 愛子
七沢リハビリテーション病院脳血管センター,言語科
関連論文
- 42.失語症検査における多段階評価法の検討(言語・その他I)
- 痴呆患者のコミュニケーション能力
- 実用コミュニケーション能力検査の開発と標準化
- III-6.失語症検査の標準化に関する報告(2)(言語障害(I))(第11回日本リハビリテーション医学会総会)
- I-C-11.失読症者の視覚認知機能 : 日本語の特徴からみた書字言語能力の分析(言語治療)(第16回日本リハビリテーション医学会総会)
- I.2-13.Backward Masking 法による脳損傷者の視覚情報処理過程の研究(第2報)(第14回日本リハビリテーション医学会総会)(脳性麻痺・脳)
- 47.Backward Masking 法による脳損傷者の視覚情報処理過程の研究(言語・その他II)
- 自発話能力評価のための臨床検査法の開発 : 健常群での検討
- 前頭葉内側面梗塞後の超皮質運動失語の1例:意図的発話時のspeech dysfluencyについて
- 漢字に選択的障害を呈した失読失書の1例
- 重度失語症者の非言語的象徴障害
- Functional Communication Ability in Aphasic Patients: CADL Test Performance as it relates to Aphasia Severity and Age.:CADL Test Performance as it relates to Aphasia Severity and Age
- 自発話能力評価のための臨床検査法の開発II : 失語群での検討
- Kanji-Kana problems in pure alexia: A longitudinal study of performance in reading aloud.:A Longitudinal study of Performance in Reading Aloud
- タイトル無し
- The Validity of a Multidimensional Scoring Method in Aphasia Testing: A Review of the Data from 196 Cases
- タイトル無し