茎乳突孔からの注入法による実験的内耳障害 : とくに内耳への物質滲透経路にっいて
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概要
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目的:著者らは顔面神経麻痺の実験的研究の目的で茎乳突孔より顔面神経内にウイルスを接種する方法を考案したが,その結果ウイルス性の顔面神経麻痺とともに接種側の内耳障害をもぎたす例のあることを知つた.顔面神経より如何にしてウイルスは内耳終末に達して障害をおこすのか,この疑問に答えるため墨汁,テトラサイクリン等の色素剤を本法によつて注入し色素が顔面神経さらに内耳に到達する経路を明らかにし,一方同様の実験操作によつて種々の物質を注入した時の平衡障害の様式および内耳の病理組織学的所見を検討した.実験方法:兎の顔面神経を局所麻酔のもとに手術顕微鏡下に露出し,27ゲージの注射針の尖端を直角に曲げ,茎乳突孔内の神経内に挿入し種々の薬物を注入した.結果:1. 色素は顔面神経に沿つて中枢方向に流れ内耳道内で吻合を介し,聴神経に入り,ここからは逆に流れ内耳内部の各部位に到達することを確認した.2. 障害は蝸牛では基礎回転に近いほど強く,前庭部で嫁球形嚢,膨大部稜周囲の膜様部の収縮性変化がみられた.3. 以上の基礎実験をもとにして,1規定塩酸,20%苛性ソーダ,30%食塩水,30%塩化カリ液を注入したが眼振,平衡障害のあらわれ方は墨汁,テトラサイクリンの場合と同様で内耳病変も程度の差はあったが同種で,内リソバ腔よりは外リンパ腔により強い病変がみられた.4. 塩酸エピレナミン,燐酸ヒスタミン注入では平衡障害のあらわれ方は軽度であつた.5. 自家血液,血清,人血清,血液の1回だけの注入でも平衡障害はあらわれなかつた.6. アトロピン,ピロヵルピ注入では平衡障害はあらわれたかつた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
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