慢性副鼻腔炎手術における上顎洞粘膜保存の検討
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概要
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慢性副鼻腔炎の綜合的手術において術後の交通路の確保のために現在まで種々の方法を行ってきた. 本回は篩骨洞のために上顎洞粘膜を保存し一部を有茎として篩骨洞に延長移植し, 術後の交通路を確保せんとした. 一側は粘膜を剥離除去し対照とした. なお篩骨洞は両側ともに十分に粘膜を除去し鼻内手術を合せて行ない下鼻道に対孔を作製した. さらに家兎を用いて家兎の自然口を軟部組織を移植し自然口の閉鎖によって慢性副鼻腔炎を作製し, 対孔作製すなはちDrainageの意義についても検討した.<BR>また人における術後成績を比較するため上顎, 篩骨および症例によって前頭洞鼻外手術による粘膜剥離除去例142例と, 上顎癌によって上顎全摘をうけた後の篩骨洞を慢性副鼻腔炎の治癒の立場からみた手術的治癒率の検討を行った.<BR>その結果は<BR>1) 上顎洞, 篩骨洞の粘膜を剥離除去した例の術後成績は鼻腔所見および自覚的にも鼻漏が消失したものは33%, さらに自覚的に鼻漏が減少したものも含むと51%が改善した.<BR>2) 上顎洞粘膜の保存手術では32例のうち22例が鼻腔所見で改善を認め, 対孔の開存例, レ線造影によって篩骨, 上顎洞との交通路が保たれている例が結果は良好であった.<BR>3) 家兎における実験的副鼻腔炎の開窓術の結果は単一の洞の副鼻腔炎においても対孔を作製しただけではすなわち, 外科的一般の排膿路を作つただけでは治癒しない例があることを知った.<BR>4) 上顎癌によって上顎全摘をされた例の篩骨洞を副鼻腔炎の手術的治癒の立場から観察したが, その30%は治癒しない例のあることは副鼻腔炎の手術的治癒率を知るために参考になる所見とした.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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