三種の高血圧病態モデルラットにおける Labetalol の降圧作用について
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概要
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新しく開発されたβ遮断薬である labetalol は従来のβ遮断薬と異なりα遮断作用も兼ね備えた新しいタイプの薬物である.われわれは Iabetalol の降圧作用につき,三つの高血圧モデル(高血圧自然発症ラット(SHR),DOCA 高血圧ラットおよび,一側腎動脈 clipping による腎性高血圧ラット(RHR)を用いて検討した.ラットは無麻酔下に4分間予熱し,尾容積法にて非観血的に血圧を測定した.また,血圧の脈波より心拍数も測定した.SHR;labetalol 25,50,100mg/kg を高血圧発症前(5週令目)より1日1回経口投与したところ,非投与群に比し,心拍数は投与日より減少を示した.血圧上昇も投与1.5週目頃より抑制きれ従来われわれのところで実験した他のβ遮断薬に比し,抑制の発現がやや早い傾向を示した.DOCA 高血圧ラット:labetalol 10,30,100mg/kg を経口投与したところ,10mg/kg では降圧作用の傾向が1時間目よりみられた.血圧は5時間でもとのレベルに戻った.一方,30,100mg/kg では5時間以上の著明な降圧作用がみられ,24時間でほぼ元のレベルに戻った.そこで,同じ量を1日1回1週間にわたって連日経口投与したところ投与1時間后には確実に血圧下降が認められた.一方,心拍数は持続的に減少し,24時間後にもなお持続していた.そのため連日経口投与の実験では,2回目投与以降の心拍数減少は初回程著明でなかった.RHR:labetalol 10,30,100mg/kg の1日1回の経口投与により降圧の傾向と心拍数減少作用が認められた.血圧は24時間でほぼ元のレベルに回復したが,心拍数減少は24時間後でもなお持続していた.6日間の連日投与実験では,10,30mg/kg では有意な降圧作用をみとめる事ができなかったが,100mg/kg では有意な降圧効果をみとめた.心拍数の減少も薬物投与1時間後に毎回認められたが,100mg/kg ではその作用が翌日まで有意に持続しているため2回目以降の投与では1時間後の心拍数減少作用はごく僅かしか認められなかった.これらの結果から labetalol がこれら全ての病態モデルにおいて降圧作用を示すことが明らかとなった.これまでわれわれの教室で検討してきたいくつかのβ遮断薬では SHR 以外では降圧作用は認められていないから labetalol のこの作用にはβ遮断作用の他にα遮断作用も関与しているものと考えられ,新しい降圧薬となる可能性が示唆された.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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今井 昭一
新潟大学医学部薬理学教室
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三富 明夫
新潟大学医学部薬理学教室
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仲川 義人
新潟大学医学部薬理学教室
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仲川 義人
新潟大医
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武田 敬介
新潟大学医学部薬理学教室
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桜井 浩
新潟大学医学部薬理学教室
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