膨張ゴーダチーズより酪酸菌の分離とその性状
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,国産ゴーダチーズの熟成後期に発生するガス膨張の原因を究明する目的で実施した.バクトヒュージ無処理の冬季乳を用い,硝酸塩無添加で製造したゴーダチーズを13〜15°Cで4ヵ月間熟成すると,30試料中,11試料が熟成2カ月以内で膨張し,その大半はガスホール周辺に大きな亀裂を生じた.このガス膨張は酪酸菌によるものであった.DRCM培地中に生育した酪酸菌は,大きな黒色コロニーと小さな褐色コロニーを呈した.膨張チーズ中の黒色コロニー数は,チーズg当り30cfu以下で,正常チーズと差が認められなかった.105株の黒色コロニーは,Cl.sporogenesが86株,Cl. beijerinckiiが11株,Cl. butyricumが8株であった.一方,褐色コロニー数は,チーズg当り膨張チーズで102〜104cfu,正常チーズで10cfu以下であった.褐色コロニーは,いずれもCl.tyrobutyricumと同定された.従って,本ゴーダチーズのガス膨張は,Cl. tyrobutyricumによるものと判断した.分離したCl. tyrobutyricum KS-222は,脱脂乳培地中ではほとんど生育しないが,S. lactis subsp. lactisとの混合培養でよく生育して多量のガスを発生した.Cl. tyrobutyricumKS-222は,DRCM培地では胞子をほとんど形成しなかったが,糖密-ソイトン培地の使用で,その胞子形成率は2.1%まで上昇した.Cl. tyrobutyricum KS-222胞子は,生育限界温度およびpHがそれぞれ7〜10°C,4.5〜5.0付近であった.Cl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育を抑制する食塩濃度は,培地pHに著しく依存し,pH5.0で約2%,pH5.5で約4%,pH6.0〜6.5で約6%であった.また,Cl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育抑制に対する硝酸カリウムの効果は,上述の食塩の場合とほぼ同様であったが,亜硝酸カリウムでは0.005%以下の濃度でCl. tyrobutyricum KS-222胞子の生育を強く抑制した.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
関連論文
- 脱脂乳の耐熱性と固形濃度の関係
- 乳酸菌 Lactococcus lactis subsp. lactisのH^+-ATPase遺伝子のクローニング
- 乳酸菌のATPase欠損変異株の解析 : 酸性条件におけるATPase遺伝子の発現調節
- 乳酸菌の膜結合型ATPase欠損変異株に関する研究
- 435 ホエーパーミエートを基質としたKluyveromyces fragilis 5013の菌体生産条件の検討
- 脱脂粉乳溶液の熱安定性向上を目的とした粉乳製造に関する技術的研究
- Penicillium Caseicolumの生産する酸性カルボキシペプチタ-ゼに関する研究-2-苦味消去作用とその大量精製
- Penicillium Caseicolumの生産する酸性カルボキシペプチタ-ゼに関する研究-1-精製及び基本的諸性質
- Effects of Addition of Arginine,Cystine,and Glycine to the Bovine Milk-Simulated Amino Acid Mixture on the Level of Plasma and Liver Cholesterol in Rats
- 流下法による繊維状大豆タンパク質の中和条件とタンパク質溶出量
- キャピラリーカラムガスクロマトグラフィーによる母乳中脂肪酸組成
- 乳中のClostridium tyrobutyricum胞子の計数方法
- ゴーダチーズから分離した酪酸菌胞子の耐熱性
- 膨張ゴーダチーズより酪酸菌の分離とその性状
- 成長期ラットの肝臓, 脳中の脂肪酸構成および学習能に及ぼすα-リノレン酸, γ-リノレン酸およびリノール酸の比の影響
- 食餌性脂肪酸がラット乳汁中の脂肪酸構成に及ぼす影響
- フィンランド粘質発酵乳ビィーリ(viili)を構成する乳酸菌の特性
- 高濃度脱脂粉乳溶液の熱安定性に及ぼす予熱の影響
- 凍結濃縮スタ-タ-の調製とチ-ズ製造への利用
- チ-ズスタ-タ-の特性と使用上の問題点