山羊および乳牛血漿プロラクチンの妊娠末期および泌乳初期における変化
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
プロラクチンの定量は生物学的検定法を用い主として下垂体について行なわれてきたが,下垂体含量の変化が直接分泌の状態を示すものかどうかについては異論も多い.また生物学的検定法による血中プロラクチンの測定は感度の不足,非特異反応による干渉などの理由で著しく困難であった.最近発展したradioimmunoassayを用いて血漿中プロラクチンの測定を行ない,搾乳その他の刺激により,急激なプロラクチンの放出が短時間,乳牛および山羊で起こることをすでに明らかにした.この実験は妊娠末期および泌乳初期における山羊および乳の牛ブロラクチン分泌の変化を知る目的で行なった.血液はザーネン系山羊,在来種山羊,およびホルスタイン種乳牛から動物を保定後できるだけ速かに採血針で採取した.血漿プロラクチン濃度は2抗体法によるradioimmunoassayで測定して次の結果を得た.1. 5月に分娩したザーネン系山羊5頭の分娩前30日における平均血漿プロラクチン濃度は89±13ng/ml(SE)であったが,分娩前3日では475±72ng/mlに増加し分娩前日に妊娠末期における最高値(848±118ng/ml)を示した.分娩後授乳した1ヵ月間は変動の巾は大きいが,高いレベルを維持した.2. 1月に分娩した在来種の山羊6頭における実験では分娩前11日における平均血漿プロラクチン濃度は17±6.9ng/ml (SE)であったが,分娩前日には妊娠末期の最高値(413.8±95ng/ml)に達し,分娩前1〜6時間では298±54ng/mlに低下した.その後,泌乳期2日の離乳まで300ng/ml前後の値を示したが,離乳後急速に低下した.死産した1例の山羊の分娩後4および24時間の値は,10ng/ml以下であった.3. 乳牛15頭を用いた実験において分娩前5〜50日の平均血漿プロラクチン濃度は8.3±2.6〜19.6±6.3ng/ml (SE)であったが,分娩前2日の44.5±16.6ng/mlから分娩前日には137±33.8ng/mlに上昇した.分娩後1〜9週間の泌乳期の平均値は15.5〜28.8ng/mlであったが,妊娠期と同様個々の測定値にはかなりの変動が認められた.以上の成績から妊娠末期に山羊および乳牛の血漿プロラクチン濃度が著しく上昇することは,多量のプロラクチン分泌が少なくとも分娩直前の数日間持続するものと考えられる.また泌乳期では搾乳または授乳にともなう刺激がプロラクチン分泌を促進する主要な要因と考えられる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
関連論文
- 乳牛の血清プロラクチン,成長ホルモンおよびトリヨードサイロニンの妊娠末期から泌乳初期における変化
- デキサメサゾン投与による乳牛の乳量および血漿トリヨードサイロニン減少に対するTRHの予防効果
- 牛乳中のα-ラクトアルブミンおよびβ-ラクトグロブリンの免疫化学的定量法
- 分房乳中のナトリウムとクロール濃度の増加とそれに伴う電気伝導度と水素イオン濃度の変化およびCMTスコアとの関連について
- 異常乳の検出手段としての電気伝導度測定とCalifornia Mastitis Testについて
- 牛乳の電気伝導度の温度補正式について
- 正常乳における比電気伝導度と乳固形分含量との関係について
- 個体別の正常乳における諸乳成分濃度の相互関係,とくに電解質濃度と乳脂率および全固形分含量との間のあきらかな負の相関関係について
- 個体別の正常乳に認められた電解質濃度と乳糖および蛋白質含量とのあきらかな負の相関関係について
- 分房乳のNa,Cl濃度の増加に伴う牛乳中の血清アルブミンおよび免疫グロブリン濃度の変化について
- 分房乳中のナトリウムとクロール濃度の増加とそれに伴う他の乳成分濃度の変化について
- 乳用家畜におけるプロラクチン分泌のラジオイムノアッセイによる研究
- 山羊および乳牛血漿プロラクチンの妊娠末期および泌乳初期における変化
- ウシ成長ホルモンに関する免疫化学的研究
- ウシプロラクチンに関する免疫化学的研究