分房乳中のナトリウムとクロール濃度の増加とそれに伴う電気伝導度と水素イオン濃度の変化およびCMTスコアとの関連について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1. 乳房に乳房炎などの障害がある場合には,血漿成分の滲出によって,牛乳のNaとCl濃度が増加するので,分房乳のNa+Cl値の分房間差(Qd)は,乳腺にある障害の程度をよく表示する.この報告では,Na+Cl値のQdと,分房乳の比電気伝導度と水素イオン濃度それぞれについて求めたQdとの相互関係,およびそれらとCMT (California Mastitis Test)スコアとの関係を検討した.2. Na+Cl値のQd, xmEq/lと比伝導度のQd, y10-4mhoとの間にはつぎの回帰式で示される直線関係が認められた.y=(0.334±0.010)x-0.090, n=126また相関係数は0.96であった.3. Na+Cl値のQd,xmEq/lと水素イオン濃度のQd, ynanomol/lとの間にはつぎの回帰式で示される直線関係が認められた.y=-(3.089±0.096)x-2.66, n=126また相関係数は-0.945であった.4. 非正常乳を判別するための基準として以前の報告でえられたNa+Cl値のQd, 7.2mEq/lをとれば,上の回帰をもとにして,相当する比伝導度のQdによる判別の基準は,3×10-4mho,水素イオン濃度のQdによる基準は25nM/lとなった.それぞれの分房間差値がこれらの値を越える場合はその分房乳を非正常乳とみなすことができる.5. Na+Cl値のQdとCMTスコアとの間には平行関係が認められ,Qdが15mEq/l以上になるとCMTスコアは(+)以上になり,20mEq/l以上では大部分が(+++)以上であった.前搾り乳試料ではNa+Cl値のQdに対するCMTスコアの分布が分房乳より分散していた.6. 非正常乳において認められるNa, Cl, K,乳糖および蛋白質濃度の変化2),およびCMTスコアによって示される白血球数の増加は,滲出液がこのような分房乳中に流入して混合し,その混入量にしたがってその組成が変化していると仮定すれば,それによって起こる一連の変化として理解できる.7. 乳牛の多頭飼育管理に適した非正常乳の検出方法が今後求められるとすれば,それは電気伝導度,水素イオン濃度などの自動的な電気測定による方法であろう.
著者
関連論文
- 異常乳の新しい判定基準とその適用について
- 分房乳の電解質濃度とくにNa+Cl値の分房間差値による非正常乳の判別について
- 142 β線放出放射性物質の生体に及ぼす障害について : 放射性カルシウム、燐、硫黄、ストロンチウムのHeLa細胞増殖に及ぼす影響itting Isotopes;Effect of the Addition of^Ca,^P,^S,^Sr and ^Sr+^Y tothe Medium of the HeLa Strain Cell Culture.
- 異常乳診断における乳汁中各種成分とライソゾーム酵素活性の相互関係
- 電気伝導度分房間差値によって観察した一牛群の潜在性乳房炎とその動態について
- 10. 泌乳と卵巣機能との関係 : I. ラットの哺乳黄体について (予報) (第31回日本獸医学会記事)
- 分房乳中のナトリウムとクロール濃度の増加とそれに伴う電気伝導度と水素イオン濃度の変化およびCMTスコアとの関連について
- サイロキシン投与による牛乳電解質濃度の減少と乳糖,乳固形分含量の変化について
- 記録的に暑かった1978年夏の個体乳成分の変化について
- 乳牛における血清サイロキシンレベルと泌乳能力との関係について
- 異常乳の検出手段としての電気伝導度測定とCalifornia Mastitis Testについて
- 家畜の血漿中サイロキシンの定量法 : III. 測定精度に影響する要因の解明
- 家畜の血漿中サイロキシンの定量法 : II. 血漿中サイロキシン抽出法の検討
- サラブレッドの乳汁の乳糖,電解質およびクエン酸濃度について
- 牛乳の電気伝導度の温度補正式について
- 正常乳における比電気伝導度と乳固形分含量との関係について
- 個体別の正常乳における諸乳成分濃度の相互関係,とくに電解質濃度と乳脂率および全固形分含量との間のあきらかな負の相関関係について
- 個体別の正常乳に認められた電解質濃度と乳糖および蛋白質含量とのあきらかな負の相関関係について
- 分房乳のNa,Cl濃度の増加に伴う牛乳中の血清アルブミンおよび免疫グロブリン濃度の変化について
- サイロキシン投与による牛乳成分の変化における,電解質と脂肪,蛋白質および乳糖含量との間のあきらかな負の相関について
- 分房乳中のナトリウムとクロール濃度の増加とそれに伴う他の乳成分濃度の変化について
- 山羊および乳牛血漿プロラクチンの妊娠末期および泌乳初期における変化
- ウシ成長ホルモンに関する免疫化学的研究