電気伝導度分房間差値によって観察した一牛群の潜在性乳房炎とその動態について
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概要
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試験場の牛群を対象として, 2年半にわたり前搾り乳の伝導度測定値 (25℃, 10^<-4> S) にもとづく伝導度分房間差値 (10^<-4> S, 以下間差値) によって潜在性乳房炎の調査を行なった. 1. 1泌乳期を通じて分房ごとに間差値の頻度分布を調べ間差値平均を求めそれをクラス分けして障害の程度を分類した. 総分房数362例のうち健康に近い分房 (クラス0と1) は75%, 問題がある分房 (クラス2) が10%, あきらかに障害があると判断される分房 (クラス3〜8) が15%あった. 2. 産次が高くなると, 健康な分房の割合が減少し, あきらかに障害のある分房の割合が増加し, 産次に伴う無脂乳固形分含量の減少と関係がある可能性が考えられた. 3. 前に位置する分房の間差値平均は, 同側の後よりも有意に大きく, 過搾乳による影響が考えられた. 4. 障害がある分房では間差値はジグザグ型に変化し, 分房ごとの間差値の標準偏差は間差値平均とともに増大した. また約30%の分房は上り坂型の変化を示した. 5. 前の泌乳期と次ぎの泌乳期の間差値平均の推移を調べると, 次ぎの泌乳期に, 前よりも高い値に移行した分房は, どのクラスでも20〜30%であった. 6. 間差値平均が高い (4×10^<-4> S以上) 分房 (クラス4以上) の過半数は乳房炎の治療をうけた分房であった. 7. 伝導度分房間差値法は, 異常乳の生成に関する混合説により, 乳試料中に混合している浸出液の量的割合にもとづいて異常を評価すると意味づけられることを論じた. 我国あるいは諸外国で多くの牛群について行なわれた乳房炎の調査結果によれば, 約半数の乳牛, あるいは総分房数の20〜50%に潜在性乳房炎が検出されるといわれる[10,22,23]. 乳牛の職業病とも呼ばれるこの乳腺の疾病について, 多くの研究が行なわれているが, 乳房炎検査によって潜在性乳房炎が疑われるような分房,あるいはそれと診断された分房が牛乳を生産し続けている牛群に, 長期的な視野においてどのような姿で存在するのか, またそれがつぎの泌乳期にどのように移行していくのかについて観察した報告は多くない. 潜在性乳房炎ほ分房から採取した乳試料についての細菌学的, 細胞学的あるいは化学的検査によって捕えられるから, その病態の全体像は多くの側面をもつが, われわれは近年診断への利用が広く試みられている電気伝導度による検査法[3-9,11,13,21]によって長期間潜在性乳房炎を観察した. この報告では当試験場の牛群の全頭について2年半にわたり連続して行なった伝導度分房間差値法による乳房炎検査[11,13]のデータをもとにして, 全分房を潜在性乳房炎の異常の程度にしたがって分類し, 分類した各クラスの分房の出現頻度, 異常の程度の経時的な変動の経過, あるいは各クラスの分房の特徴, 泌乳期ごとのクラスの推移, またクラスと治療との関係などについて調査した果結を報告する.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1982-12-25
著者
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