個体別の正常乳に認められた電解質濃度と乳糖および蛋白質含量とのあきらかな負の相関関係について
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概要
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1) 個体別の正常乳の電解質濃度と無脂固形分含量との間に,一方が増加すれば他方が減少する,逆の相互関係のあることが認められた.2) この正常乳は,試験場の乳牛群中の,38頭のホルスタイン種乳牛から,3年間に492回の分房別朝搾乳をしてえた分房乳をもとにしている.それらの分房乳についてスクリーニングを行い,障害の影響の疑いのあるもの,泌乳中期以外の時期に採取したもの,5産以上の乳牛から採取したものを順次除外した。ついで同じ乳房から同年同月内に採取した分房乳を,一まとめにして,正常乳1試料とし,各分房乳の成分測定値の算術平均を正常乳試料の乳成分値とした.3) 正常乳の蛋白質含量と乳糖含量との間には,有意の相関(r=0.413,P<.01)が認められ,各電解質の濃度間にも,Na(mEq/l)とK(mEq/l)の間に0.317(P<.05),Na, KとCl(mEq/l)の間にそれぞれ0.718(P<.001), 0.631(P<.001).の正の相関が認められた.4) 正常乳の各電解質濃度と乳糖(L,%)および蛋白質含量(P,%)の間には,Na濃度と蛋白質含量との相関を除いて(P>.10)いずれも高い負の相関(P<.001)が認められ,(Na+K+Cl, x mEq/l)と(P+L,y%)との間に高い負の相関(-0.822,(P<.001)が認められ,つぎの直線回帰が得られた.y=-(0.0352±0.0034)x+10.6821,n=56.5) Na濃度が違う2例の正常乳を仮定して,その乳成分濃度を各成分間の回帰式から試算すると,2試料間に電解質濃度(Na+K+Cl)の差が,100mlについて87mgあるとき,(P+L)の差は,910mg/100gとなり,これは蛋白質含量の差460mg/100gおよび乳糖含量の差450mg/100gによることが示された.正常乳の電解質濃度は,無脂固形分(SNF)含量と非常に大きな関係がある要因であることが明らかにされた.6) 電解質濃度とSNF含量との関係は,正常乳が一定の浸透圧をもつものであることから,その圧の中で電解質が占めている(分)圧の増減が,他の乳成分が占める(分)圧に変化を及ぼす相互関係に起因していると考えられ,電解質の増加に対応して減少する乳成分が蛋白質あるいは乳糖のように分子量が相対的に大きい物質である場合は,その減少(重)量は著しく大きくなると説明される.7)上述の正常乳の電解質濃度とSNF含量との関係は,異常乳生成の場合に認められている似たような関係とは,全く別の機構によるものでなければならず,それは乳腺の電解質輸送の問題と関連する可能性のあることを示唆した。そしてこの関係についての究明は,低無脂固形分乳の問題を解明する上で,手がかりを与えるであろうことを論じた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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