豚挽肉の死後変化におよぼす貯蔵温度の影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
PSE豚肉は高温と低pHの組合せによって発生することが明らかにされており,cold shorteningは死後筋肉を急激に冷却すると観察される現象である.そこで,屠殺直後の豚筋肉(半膜様筋と胸最長筋)を挽肉にして0,10,20,30,40°Cの各温度に放置した場合,それぞれの温度が豚筋肉の品質におよぼす影響を検討するため,挽肉のpH,7分加熱燐含量,保水力,ミオシン系蛋白質の抽出性,色調の死後変化を調べた.豚挽肉のpHおよび7分加熱燐含量は,高温度区ほど死後急速に低下した.豚挽肉を30°C以上の温度に放置すると,ミオシン系蛋白質の抽出性が急激に低下しその後の上昇がみられず,保水力,色調が劣化し,いわゆるPSE筋の様相を示した.これらのことはGREASER et al.27,28), PARK et al.29)の報告から考えて,豚筋肉を人為的に高温度に放置しても,筋肉のpHが急速に低下し,いわゆる高温と低pHの環境下で筋原線維の不可逆的収縮と,それに重層したミオシンの変性がおこり,PSE筋が発現するという機構を示唆している.死後24時間の豚挽肉のミオシンBの抽出性は,0°C区より10°C区のほうが,10°C区より20°C区の方が高く,ミオシンBの抽出性が筋肉の収縮の程度と一致していると考えると,豚筋肉でもcold shorteningがおこるものと考えられたが,豚挽肉の保水力は0°C,10°C,20°Cの間に殆んど差がみられず,豚挽肉の色調も低温で貯蔵するほど退色が少ないことから,豚筋肉ではcold shorteningの品質へおよぼす影響は殆んど無視できるものであった.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
-
中井 博康
農林水産省畜産試験場
-
安藤 四郎
農林水産省畜産試験場
-
池田 敏雄
農林水産省畜産試験場
-
斎藤 不二男
全国農業協同組合連合会
-
池田 敏雄
農林水産省畜産試験場加工部
-
安藤 四郎
農林水産省畜産試験場加工部
関連論文
- 梅山豚の成長にともなう枝肉構成の変化
- 13. 最近の畜肉の凍結、解凍(セミナー「食品における低温の利用」)
- 豚肉のPSE判定と理化学的性状との関係
- 食味のよいロ-スハムを製造する技術-2-
- 食味のよいロ-スハムを製造する技術-1-
- 塩漬液の食塩濃度と塩漬日数の差異がロ-スハムの品質におよぼす影響
- 超音波による肉豚の評価法
- 豚の発育に伴う体構成および枝肉構成の変化
- 畜肉の保水力に関する研究-4-共同実験による各種測定法の検討
- 畜肉の保水力に関する研究-2-
- 味覚センサによる酒質評価
- 畜肉の保水力に関する研究-3-畜肉への加塩時期と塩漬日数が保水力におよぼす影響
- 発酵温度と発酵時間がセミドライ・ソ-セ-ジの品質に及ぼす影響-1-
- 塩せき方法の違いが非加熱肉製品(ラックスハム)の品質におよぼす影響-1-
- 塩漬方法の差異がロ-スハムの品質におよぼす影響
- 塩漬温度と塩漬日数の差異がロ-スハムの品質におよぼす影響
- 飼料のエネルギ-水準と屠殺日齢がハンプシャ-種およびデュロック種豚の肉質におよぼす影響-2-枝肉の構成割合および豚肉の理化学的測定値におよぼす影響
- 飼料のエネルギ-水準と屠殺日齢がハンプシャ-種およびデュロック種豚の肉質におよぼす影響-1-生体形質および枝肉形質におよぼす影響
- 肉豚の筋肉別保水力について
- 畜肉の保水力に関する研究-1-保水力の測定方法について
- 牛筋肉のテンシプレッサーによる硬さの測定
- 黒毛和種,褐毛和種およびホルスタイン種経産牛の枝肉構成と筋肉分布について
- 屠殺直後および屠殺24時間後の加温処理が豚筋肉の品質特性におよぼす影響
- 鶏肉におけるpH,K値,保水性および遊離アミノ酸含量の死後変化
- 豚挽肉の死後変化におよぼす貯蔵温度の影響
- 飼料の処理方法の差異が牛の肉質におよぼす影響に関する研究-4-粉砕大麦と圧片大麦の形態がと体の肉質におよぼす影響
- 飼料の処理方法の差異が牛の肉質におよぼす影響に関する研究-3-粉砕大麦と圧片大麦の形態がと体の品質におよぼす影響
- 飼料の処理方法の差異が牛の肉質におよぼす影響に関する研究-2-大麦とふすまの蒸煮がと体の肉質におよぼす影響
- 飼料の処理方法の差異が牛の肉質におよぼす影響に関する研究-1-大麦とふすまの蒸煮,非蒸煮がと体の品質におよぼす影響