仮説を淘汰する理科授業開発の事例的研究 : 小学校4年生理科「よくとぶ空気でっぽうのなぞにせまる」の実践から
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概要
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この論文は『研究論文集-教育系・文系の九州地区国立大学間連携論文集-』Vol.4, No.2(2011)に査読を経て受理されたものである。『宮崎大学教育文化学部紀要.人文科学』23号(2010/9)p.65-74に修正前別版あり。理科授業では仮説を立てることが重視されているが, 児童の中には相矛盾する複数の仮説を同時に信じる状況がある. そのような状況を前提としながら, 実験や観察によって仮説が淘汰され, 科学的な仮説が地位を得るような授業開発が必要である. そこで, 小学校4年生の理科単元「よくとぶ空気でっぽうのなぞにせまる」において, 授業デザイン指針として, 第1に児童が複数の仮説を持つこと, 第2にそれらの仮説を実証および反証すること, 第3に仮説を淘汰することの3点を設定し, 授業を行った. 授業場面では, 仮説間の矛盾や信用の度合いに関わらず, 複数の仮説を支持することを奨励し, それらの仮説を実証したり反証したりすることを目的とした実験を考案させた. また, 実験後は, 児童が持つ複数の仮説について, 淘汰のための話し合い活動を位置づけた. これらの授業デザイン指針に基づく具体的支援の結果, クラスの中で4つの仮説のうちの2つが反証・淘汰された. 一方で残りの2つの仮説については決定的な実証・反証にはならなかった. これらの事例より, 3つの授業デザイン指針に基づく学習指導が仮説の淘汰に有効に働いたものの, 筒の中の現象を圧力と関連づけて合意するにはいたらなかったことが明らかになった. 第2の授業デザイン指針に基づく学習指導を具体化するにあたって, 空気の体積変化量を数値化させたり, 圧力を可視化したりして, 筒の中の現象をさらに注意深く着目させるような支援が不十分であることがわかり, 3つの授業デザイン指針の有効性とそれを具現化する際の課題について, 事例に基づいて検証することができた.
- 2011-02-16
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