二段林の成長予測に関する研究(1) : カラマツ‐トドマツ混植林分の成長特性について
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概要
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東京大学北海道演習林において1956年から施業実験がなされているカラマツートドマツ二段林について,34年生までの成長経過の調査結果を解析した。その結果,二段林の上木と下木の成長の関係について以下のことが明らかになった。1)12年生までの初期の生育段階では気象条件を緩和し,生存条件に良い影響を与え合っていること。2)21年生以降では上木の樹高成長に伴い,下木の生育環境が低下し,下木の成長が阻害されること。3)相対照度に代わる二段林の光環境の尺度として,上木の相対幹距が有効であること。4)下木の断面積粗成長量を同期間の一斉林の成長量との比で表わすと上木の相対幹距の一次関数で近似でき,その係数がどの生育期間においても一定であること。5)下木の平均樹高も一斉林の平均樹高との比で表わすと上木の相対幹距の一次関数で近似できること。これらのことから,予測しようとする期間中の下木の一斉林の成長量がわかれば,上木の相対幹距との回帰式を用いて二段林の成長を予測することが可能となった。このような二段林の成長予測モデルが作成されれば,シミュレーションによって,上木と下木それぞれの生産目標に応じた,本数の管理が可能となる。ここで述べた相対的な成長関係には普遍性があり,他の地域においても利用できるものと思われる。A project, carried on in the Tokyo University Forest in Hokkaido since 1956, to research the growth process of two-storied artificial stands consisting of Japanese larch (Larix kaempferi) and Saghalien fir (Abies sachalinensis) and to perform some studies on them, has made clear the following. 1) In the first growing stage until 12 years old, the two species beneficially influence each other by relieving weather conditions. 2) After 21 years old, in proportion to height growth of the upper trees, environmental conditions for the lower trees deteriorates and their growth is obstructed by the upper ones. 3) Relative spacing is an effective index of the light environment instead of relative light illuminance in a two-storied stand. 4) A ratio of the gross basal area increment of the lower trees to that of a uniform stand is directly proportional to relative spacing of the upper trees and the parameter of this linear function is constant in any growing period. 5) A ratio of the average height of the lower trees and a uniform stand is also a linear function of relative spacing of the upper trees. From the above results; if the increment of a uniform stand of the lower species is given, we are able to predict the growth of a two-storied stand using the linear function of relative spacing of the upper species. Using the growth prediction model, we are able to control the number of upper trees according to the timber production goal. Because the above relative growth model is universal, we can apply it to different regions.
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