スギ幼齢林における地上部現存量の経年変化
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
スギ林の地上部現存量,とくに葉の現存量が林冠の閉鎖前後に,どのようにかわるかを,同じ林分で時をおってしらべた。調査林分は,東京大学千葉演習林仁ノ沢(39林班C2-1小班)所在の密度試験地の一部で,3段階の密度区画を対象とした。各区画は35m×30mの長方形で,それぞれの中央に20m×10mの継続測定区,D区(植栽密度13,333本・ha-1),M区(6,667本・ha-1),S区(3,333本・ha-1)を設置,周辺部から試料木を伐倒し,継続測定区の現存量を推定した。調査は林齢14年生(1980年)から20年生(1986年)の間に5回,いずれも5月前半におこなった。葉の現存量は林冠の閉鎖時に,一時的に大きくなる。最大値は,D区が44.4t・ha-1(16年生時),M区が42.0t・ha-1(18年生時),S区が31.2t・ha-1(15年生時)で,D区,M区では,その後,自然間引きがおこり,葉の現存量の減少がいちじるしい。立木密度が高いほど,下枝が枯れあがるので,葉が部分的に集中するが,葉密度(乾重)は1kg・m-3前後に上限がみられた。枝や幹の現存量は,木質の蓄積により林齢とともに増加する。しかし,D区の枝の現存量だけは,葉と同じように16年生時が最大,以後減少した。今後,葉の現存量がどの程度の値におちつくかは,さらに測定を継続しなければわからない。また,密度と葉の現存量の経年変化の関係を,よりあきらかにするには,同じような密度試験地での測定のくりかえしが必要である。Changes in aboveground biomass, especially in leaf biomass, of a young manmade Cryptomeria japonica forest were followed in the same plots during the period before and after canopy closing. The study plots were in a spacing experiment stand in Tokyo University Forest in Chiba and 35m×30m in rectangle, respectively, and differed in planting density; 13,333 tress・ha-1 in CrD, 6,667 trees・ha-1 in CrM, and 3,333 trees・ha-1 in CrS. The continuous study plot, 20m×10m in rectangle, was divided in the middle of each study plot; D (dense) in CrD, M (medium) in CrM, and S (sparse) in CrS. The biomasses of the plots, D, M, and S were estimated by cutting trees selected from the part around each continuous study plot, respectively. The estimations were made five times during years 1980 to 1986, i. e. 14-, 15-, 16-, 18-, and 20-year-old in stand age. The measurements in each year were made in the first half of May before the beginning of vigorous growth. A passing higher level of leaf biomass was observed when the forest canopy was closing. The maximum leaf biomass in each continuous study plot was 44.4t・ha-1 in D of 16-year-old, 42.0t・ha-1 in M of 18-year-old, and 31.2t・ha-1 in S of 15-year-old. After the maximum, the leaf biomass decreased rapidly with the beginning of natural thinning in the plots D and M. The clear length of tree increased with density, and the leaf density in the crown layer became higher. But there was a upper limit in leaf density, nearly at 1 kg dry weight・m-3. The branch and stem biomasses increased with age by accumulation of wood except the branch in D. The branch biomass in D showed a passing higher level as seen in leaf biomass. The measurements in these plots will be continued to follow the biomass in the future. Further data may be necessary for checking the effect of density on leaf biomass changes.
- 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林,The Tokyo University Forests,東京大学農学部千葉演習林,東京大学農学部林学科,University Forest in Chiba, Faculty of Agriculture, University of Tokyo,Department of Forestry, Faculty of Agriculture, University of Tokyoの論文
著者
関連論文
- 南伊豆の広葉樹林における乾性土壌の水分環境 : 一時的な強度の乾燥に伴う吸水性の低下とその影響
- 踏圧と樹木園の土壌物理性との関係
- 23-62 Pb-210を用いた年代測定法の樹木への応用の試み(23.地域環境)
- 年輪幅-容積密度関係を用いたスギ造林木の材積成長量の重量成長量への変換の試み
- 湿地生樹木における根への酸素供給 : 根内酸素濃度の実測と二次通気組織の観察
- 千葉演習林相の沢スギ品種試験地50年の生長経過
- 秩父演習林産落葉広葉樹の樹皮呼吸速度
- 酸性水散布による土壌酸性化初期におけるクロマツ苗の生育
- 高速道路緑化における樹木活力調査手法の現状と望まれる要件
- 富士山溶岩流上に成立したアカマツ林のA_0層の炭素濃度と窒素濃度の季節変化
- ハバチ類によるカラマツ林の食葉被害と生長低下
- アカマツ、ヒノキ幼齢木の幹直径の日変化と季節変化
- 土壌の過湿害(トピック(土壌))
- 雑草木の刈り払い方法が植栽木の成長に与える影響
- 熱帯泥炭湿地における湛水環境下でのカユプテの成長(Journal of Forest Research)
- 熱帯荒廃地の環境ストレスと樹木の反応 (特集 熱帯林の保全と修復にむけて)
- バビショウ林の斜面位置と細根量
- 人口被陰下でのアカマツ,スギ,ヒノキ1年生苗の生長
- アカマツ,スギ,メタセコイア立木の幹木部温度の日変化と季節変化 : とくに日中低下について
- わかいアカマツ, ヒノキ, シラカシ立木における幹樹皮呼吸と木部温度の日変化
- 林内および伐採跡地に生育するシラベ前生稚樹の光合成・呼吸
- 立木の光合成・呼吸速度の計測システムとブナ林での計測例
- シラカシ立木の幹樹皮呼吸の日変化と季節変化
- 上木皆伐後のシラベ、アオモリトドマツ前生稚樹の生長と微地形
- 切断したわかいアカマツの幹の樹皮呼吸速度と樹液流速度
- わかいアカマツ立木における樹皮呼吸の日中低下と幹径の収縮
- わかいアカマツ立木の幹樹皮からのCO_2放出量の日変化
- ホオノキ立木の樹皮からのCO_2放出量の日変化
- 樹木の非同化器官の呼吸 : 森林の物質収支と関連して
- わが国の失われつつある土壌の保全をめざして - レッドデータ土壌の保全 -
- 13-15 土壌版レッドデータブックの作成について(13.土壌生成・分類)
- 東京大学千葉演習林に植栽されたスギ科6種の葉の水分特性の季節変化
- 千葉演習林沿革史資料(6) : 松野先生記念碑と林学教育事始めの人々
- 千葉演習林沿革史資料(6)松野先生記念碑と林学教育事始めの人々
- 東京大学千葉演習林におけるケヤキ人工林の生長と現存量131
- 植栽密度の異なるスギ幼齢林における枝葉の枯死量
- スギ幼齢林における地上部現存量の経年変化
- 森林を育成する技術(日本林学会主催公開シンポジウム記録"21世紀にむけての森林・林業")
- ○野外での欧州ブナのCO_2代謝量と気象要素
- ○産地のちがう欧州アカマツ苗のCO_2同化量の季節変化
- 造林ハンドブック, 坂口勝美・伊藤清三監督, 935ページ, 図 127+241,表 106+107(ほかに付図、付表), 養賢堂, 1965,2,000円
- 131. アカマツ・スギ・ヒノキのナエの日同化量の季節変化(第75回日本林学会大会講演要旨)
- ○土の水分をかえてそだてたナエのCO_2同化と空中湿度
- メタセコイヤのCO_2の同化, 呼吸および蒸散
- ○white spruceとbalsam firのCO_2同化と呼吸
- ○常緑樹のCO_2同化, 耐寒性, 蒸散の季節変化
- ヒデリとポプラおよびヤマナラシの蒸散・CO_2同化
- I. 林業学
- ○森林限界にそだつPinus Cembraの1年間の乾物生産量 : I. 気象条件とCO_2同化量 : II. 生長量とOC_2代謝量
- ○常緑針葉樹の同化能力の季節変化
- ○5年生ポプラ林でしらべたCO_2同化とヒデリの関係
- ○ポプラの蒸散量のクローンによるチガイ
- ○森林限界にそだつPinus Cembraの秋から春までのCO_2同化
- 木化したミキとエダの呼吸
- 世界の森林面積とその潜在生産力
- 欧洲アカマツの乾物生産量
- デンドロメーターによる肥大生長の測定
- リター落下量からみた樹木のフェノロジー1 : 東京大学千葉演習林荒樫沢におけるアカガシの落葉パターン
- 駒場苗圃、代々木演習林、田無苗圃 : 演習林田無試験地沿革史補遺
- 東京大学演習林 私記 (特集 20世紀の森林・林業(最終回/11)演習林/生産構造/森林航測)
- 7 おわりに : 千葉演習林沿革史資料(番外メモ) : 往復文書綴に垣間見る千葉演習林の昔
- 6 戦時下の千葉演習林 : 千葉演習林沿革史資料(番外メモ) : 往復文書綴に垣間見る千葉演習林の昔
- 5 交通・通信 : 千葉演習林沿革史資料(番外メモ) : 往復文書綴に垣間見る千葉演習林の昔
- 4 保護・管理 : 千葉演習林沿革史資料(番外メモ) : 往復文書綴に垣間見る千葉演習林の昔
- 3 実習・教育 : 千葉演習林沿革史資料(番外メモ) : 往復文書綴に垣間見る千葉演習林の昔
- 2 試験・研究 : 千葉演習林沿革史資料(番外メモ) : 往復文書綴に垣間見る千葉演習林の昔
- 1 はじめに : 千葉演習林沿革史資料(番外メモ) : 往復文書綴に垣間見る千葉演習林の昔
- 千葉演習林沿革史資料(番外メモ)往復文書綴に垣間見る千葉演習林の昔(東京大学演習林100周年記念(4))
- 千葉演習林沿革史資料(3) : 東京大学農学部林学科学生の造林学現地実習の変遷
- アカマツほか針葉樹メバエの光合成・呼吸速度
- 造林樹種の選択をめぐって
- わかいアカマツの幹と枝の呼吸量と直径・年令の関係〔英文〕
- 環境や種類で変わる木の生理 (緑は人間の役に立つのか(特集))
- ○わたしのポプラ造林
- ○標高のチガイとマツの各部分の年生長径路
- ○環境条件と肥大生長
- テーダマツのメバエの同化量と光のツヨサの関係
- ガラス室内のCO_2濃度の日変化
- Pinus cembraのCO_2同化と光・葉温との関係
- 海水の洪水が木の生育にあたえる影響
- ポプラの同化量, 呼吸量の種類によるチガイ
- 光合成がふるわないばあいにネのノビを左右する条件
- ネのノビと光合成の関係
- ネのノビと地上部の光のツヨサとの関係
- ○Thermoflux : 蒸散量・同化量・呼吸量をはかる新器械
- ○ハの温度がたかすぎるとCO_2同化量にどうひびくか
- かわいたばあいにキがいきのびるのにやくだつミキの水分
- ○シトカトウヒの樹皮, 木部の温度測定
- ○フアイバーガラス・ブロツクによる土の水分の測定
- ○キリハのいきのびるジカンはハのトシによつてちがう
- ○キリトリが同化にあたえる影響
- ○デンマークにおける間伐の問題と実際
- ブナの乾物生産のシワケ
- ブナの葉と短枝
- ブナの葉の呼吸量
- 人工被陰下でのアカマツ,スギ,ヒノキ1年生苗の生長
- アカマツ,スギ,メタセコイア立木の幹木部温度の日変化と季節変化
- スギ幼齢林における地上部現存量の経年変化
- アカマツほか針葉樹メバエの光合成・呼吸速度
- 上木皆伐後のシラベ・アオモリトドマツ前生稚樹の生長と微地形