訪問着護師の排便援助に関する研究 : 排便問題を抱える要介護高齢者と排便介助のできない家族介護者に対して
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概要
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本研究の目的は,在宅で排便問題を抱える要介護高齢者と排便介助のできない家族介護者に対して排便援助を行っている訪問着護師の看護内容を検討することである。訪問着護師歴が1年以上で,該当する事例を有する訪問看護師を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した。結果は以下の通りである。1.要介護者と家族介護者が在宅療養生活の継続を望む場合,訪問着護師は訪問時に要介護者の排便が確実にみられるように習慣的に摘便・浣腸を行っていた。2.訪問着護師が習慣的に摘便・浣腸を行う看護との関連要因は,1)要介護者が排便援助を必要とした時,家族介護者が排便介助の技術を習得していなかったこと,2)家族介護者の健康問題と家族員の少なさにより,家族介護者が排便介助を行うことの大変さ,3)家族介護者の介護に対する不安と,副介護者が不在で家族介護者が排便介助を行うことの大変さ,4)訪問看護師が家族介護者に排便介助を担ってもらうことに対する遠慮や気兼ね,5)要介護者と家族介護者の在宅サービス利用に対する前向きな意識,であった。3.訪問着護師が排便援助を行うことの効果は,1)要介護者の腹部症状をはじめとした身体的状態が安定していること,2)訪問日以外で排便がない,あるいは排便がみられても少量で,排便介助に関する家族介護者の負担が少ないこと,3)在宅療養期間が短期入所施設などを利用しつつも長期継続していること,であった。The purpose of this study is to clarify the goals of bowel elimination care by home care nurses. Semi-structured interviews were conducted with home care nurses who had experienced in such matters. The interviews yielded the following; 1. When a patient and families wanted the patient to remain at home, nurses were able to assist the patient to establish habitual bowel movements. Nurses habitually performed this duty either by giving an enema or digitally removing impacted feces. 2. Home care nurses had to assist in bowel removal for a number of reasons when a patient was unable to have natural bowel movements; (i) The family lacked sufficient knowledge or skills for fecal care. (ii) Fecal care was an intolerable physical burden for families. (iii) The family could not tolerate the negative response of patient during fecal care. (iv) Nurses themselves hesitated to burden the families with such a troublesome task. (v) Nurses felt they were being of use to the patients and families, allowing them to lead better lives. 3. Home care nurses were given good evaluations when; (i) The patient remained in good physical condition. (ii) Nurses could successfully perform bowel removal and visual contact with fecal matter was minimized. (iii) The patient was able to continue living at home even if requiring occasional short-stay-programs.
- 千葉看護学会の論文
- 2006-06-30
著者
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