コレラ菌の各種抗菌剤に対する感受性
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概要
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エルトールコレラは1961年以降世界的に流行を続けているにも拘らず,分離株の各種抗菌剤に対する年時的・地域的な感受性パターンに関する調査は余り行われていない.我々は1975年ケニアにおいて分離したエルトールコレラ菌97株と,1973年から1978年の間にフィリピンで分離された52株について12種の抗菌剤に対する感受性を調査した.最も抗菌力の強かったものはミノサイタリンであり,全株が0.39mcg/mlまたはそれ以下の濃度で発育が阻止された.ナリディキシックアシッドもこれに準ずる抗菌力を示したが,約10%の株に対する最小発育阻止濃度(MIC)は0.78mcg/mlであった.これらに続くものはクロラムフェニコール,リファンピシン,および最近開発されたセファロスポリン系薬剤のSCE-963であり,約80%の株が0.78mcg/mlの濃度で発育を阻止された.ゲンタマイシン,スルベニシリンではMICのピークがそれぞれ1.56mcg/ml, 3.13mcg/mlを示し,カナマイシン,エリスロマイシン,セファレキシン,セファゾリン,アモキシシリンはさらに効果が劣っていた.ケニア株とフィリピン株の比較ではナリディキシックアシッド,ミノサイタリン,カナマイシン,ゲンタマイシンでわずかな差がみられたほかは,極めて類似した感受性パターンを示していた.約10年前の善養寺らによるフィリピン株の成績と比べても,感受性パターンに殆ど変化はみられず,耐性化の傾向も窺われなかった.One hundred and forty-nine strains of El Tor vibrio were examined for their susceptibilities against 12 antimicrobias. Ninety-seven strains out of 149 were isolated in Kenya in 1975, and 52 strains were isolated in the Philippines from 1973 to 1978. The organisms were most sensitive to minocycline which inhibited the growth at the concentration of 0.39 mcg/ml or less. Naridixic acid was the second effective antibiotics to inhibit the organisms. Minimum inhibitory concentration (MIC) of chloramphenicol was 0.78mcg/ml in 85% of the strains. Rifampicin showed almost same MICs with chloramphenicol. Aminoglycosides and beta-lactam antibiotics were not excellent with the MICs of 6.25mcg/ml or so in majority. But newly developed antibiotics of cephalosporin, i.e., SCE-963, was valued about same as chloramphenicol as far as susceptibility in vitro is concerned. There was no significant discrepancy of drug sensitivity pattern in the strains from Kenya and from the Philippines. Highly resistant strains were not found.
- 長崎大学熱帯医学研究所,Institute of Tropical Medicine, Nagasaki Universityの論文
- 1979-03-30
著者
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