成熟家兎における実験コレラの新型モデル
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概要
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成熟家兎における実験コレラの新型モデルを開発した.径約6mmのシリコンチューブを,回盲部から小腸へ向って約10cm挿入し,回腸末端を結紮する.コレラ菌約10^6個を十二指腸へ注入すると平均12時間で下痢便がチューブを通して吸引されるようになる.下痢が始まったら直ちに5%ブドウ糖入りの乳酸化リンゲル液で持続点滴を始め(耳静脈から),下痢量+100~200mlの割合で輸液を続ける.この方法で,体重2~3kgのウサギから1時間に20~30ml,1日500ml以上の下痢便を採取することが出来る.発症率(再現性)は100%であった.実験終了後,チューブを除去してウサギを生かし続けることも可能である.このモデルにおいて経時的に採取される便は盲腸・結腸において修飾されていない.従ってその分析(菌叢・抗体・酵素・細胞成分・胆汁成分・電解質・等々)によってコレラの小腸で何が生じているかを判定することが出来る.また人工的に投与した物質の追跡によって吸収・分泌能などを判定することも出来る.更に脱水状態からその回復期における生理的反応,免疫の成立経過等々,このモデルの利用価値は極めて高いものであり,我々も既に抗生剤の腸内移行,コレラトキシンの作用時間などを検討するために使用している.A new model for experimental cholera in adult rabbits was established with the following procedure. A soft elastic silicone tube was inserted to the terminal ileum through an incision at the ileo-caecal junction. The incision and the terminal ileum were tied with silk to fix the tube and to block the movement of the intestinal contents between the ileum and the cecum. A proper amount of Vibrio cholerae O1 was inoculated to the duodenum. Then, closed the abdomen, and the tube out side the body was fixed to the skin with sutures. After the inoculation, the diarrhea started in about 12 hours. The amount of the diarrheal fluid which was sucked through the tube was roughly about 20-30 ml per hour, under the hydrated condition with continuous intravenous fluid therapy. In this model, diarrheal fluid sucked through the tube is not modified in the cecum and the colon. Therefore, the accurate informations about the phenomena took place in the small intestine are obtained by the analysis of sucked stool (cholera stool in situ). We have applied this model for many experiments, and all animals without exception developed copious amount of diarrheal fluid. We designated this procedure the T-model.
- 長崎大学熱帯医学研究所,Institute of Tropical Medicine, Nagasaki Universityの論文
- 1983-03-30
著者
-
一瀬 休生
長崎大学熱帯医学研究所病原因子機能解析分野
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一瀬 休生
琉球大学 細菌
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岩永 正明
Ddepartment Of Bacteriology Faculty Of Medicine University Of The Ryokyus
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