コレラ菌が毒素産生中に示す形態学的変化について
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概要
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毒素産生期にみられるコレラ菌の形態学的変化に基づいて,毒素放出の機序を推定しようとする試みが散見されるがまだ一致した見解は得られていない.そこで毒素強度産生性のコレラ菌569B株及び毒素非産生のK-25株を用いて,それぞれ増殖過程にみられる形態学的変化を比較し,毒素産生との関係について検討した.30℃の振盪培養を行うと569B株では毒素産生期に多形性が認められたが,K-25株では全く多形性を示さなかった.また569B株でも37℃高層静置培養の場合には毒素も産生されず,多形性もみられなかった.これらの所見は多形性と毒素産生との間に何らかの関係があることを示すものといえる.この形態変化の中で特徴的なものは,大円形細胞の出現および細胞壁の突出とそれに続く被膜小体の遊出であり,被膜小体は大半が1,000A以下であった.また拡大したPeriplasmic spaceには細胞質源に由来すると思われる被膜小体の存在が認められた.今回の観察によって,毒素非産生株は勿論,毒素産生株でもその産生が無視出来る条件下で培養すると多形性は認められないことが明らかとなり,コレラ菌におけるこのような変化は毒素の産生または放出に密接な関係を有するものと思われた.Morphological changes of Vibrio cholerae during toxin production were analyzed by electron microscopy. The appearance of large round cells, bulgings out (or buddings) of the cell surface, and membrane enveloped particles were observed. The particles were often seen on the cell surface, and their size ranged mainly from 500-1,000 A in diameter. The same kind of particles were also seen in the widened periplasmic space, and seemed to originate from the cytoplasmic membrane. These changes were not generally observed in a non-toxigenic strain, nor in a toxigenic strain grown under conditions in which toxin was not produced.
- 長崎大学熱帯医学研究所,Institute of Tropical Medicine, Nagasaki Universityの論文
- 1979-12-28
著者
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