アイルランド性のアジア性を意識すること : ジョイス周辺のアイルランド人オリエンタリストたち
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概要
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本稿は、アイリッシュ・オリエンタリズムがどのようにジェイムズ・ジョイスと彼の同時代人達に影響を与えたかを探求する。M. マンスーアは『アイリッシュ・オリエンタリズム物語』で、アイルランドのオリエンタリストたちは「大英帝国の統治と意地に大いに貢献してきた」と語る(13 頁)。ジョイスは、英語とは異なりアイルランド語は東方起源で、多くの言語学者たちから古代フェニキア人の言葉と同一視されてきたと主張した(CW 156)。彼は、多くのアイルランド人たちが東方の傑作を翻訳し、紹介することで、英国芸術と思想に大きく貢献してきたと記した(CW 171)。なぜ多くのアイルランド人がオリエント学に興味を抱いてきたのであろうか?若きジョイスは、ジェイムズ・クラレンス・マンガン、ジョージ・ラッセル、W. B.イェイツといったアイリッシュ・オリエンタリストに影響を受け、神智学やオリエント学をダブリンで学んだ。ジョイスの時代のアイリッシュ・オリエンタリストは、しばしばアイルランド文化を英国文化から区別する必要があった愛国者たちであった。アイルランドのオリエンタリズムは大英帝国に対するナショナリズムと強い関係をもって発展してきた。例外は、ギリシャ系アイルランド人ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)で、日本人妻を娶り、日本について多くの論考を書いた。ジョイスを中心としてオリエント学を考察すると、東洋と西洋の文化交流が双方向に行われてきたことを証明することが出来るのである。
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