「快い哲学」 : ジョイス作品における宗教的アイデンティティの和解
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概要
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本論は、ジェイムズ・ジョイスの作品群において、どのように宗教的葛藤と和解が描かれているかを探求している。ジョイスの東方への文学的かつ宗教の旅がキリスト教との和解の前にいかに必要不可欠なものであったかを示すことを目的とする。仏教は、キリスト教の相対するものとして重要な役割を演じているようである。彼は、ダブリンで神智学を通じて仏教に親しんだ。 1903 年に、ジョイスはH. フィールディング= ホール著『ある民族の魂』の書評を書いた。その中でオリエンタルなビルマの雰囲気にどっぷりと浸かりながら、ホールはリチャード・エルマンが注釈しているように、仏教を「戦争を見当違いのものとして脇にやる」「快い哲学」として讃えている(93 頁)。エルネスト・ルナン著『イエスの生涯』を読んで、ジョイスはイエス・キリストの生涯と釈尊のそれを『スティーブン・ヒーロー』のスティーブンの内的独白で比較した。イエスは聖書では独身男として描かれているが、妻帯者ゴータマは妻ヤショダラと一人息子ラーフラとともに語られる。もっともイエスもゴータマも30歳前後に出家した。宗教問題を考えるときでさえ、愛、結婚、家族生活というものが、ジョイスにとっては重要であったようだ。結局のところ、彼は小説を書いて自分の宗教的葛藤を解消したのであった。
- 2013-11-00
著者
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