経穴刺激理学療法の効果に関する基礎的検討 : 尺沢への抑制手技が母指球筋のF波および自律神経機能に与える影響(平成23年度研究助成報告書)

概要

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本研究では,臨床的に母指の対立運動を調整するために用いている手太陰肺経の尺沢への筋緊張抑制目的での経穴刺激理学療法を健常者に実施し,経穴刺激理学療法実施前後に正中神経刺激での母指球筋より脊髄神経機能の興奮性の指標であるF波および自律神経機能のひとつの指標であるLF/HF(Low Frequency/High Frequency)を同時に測定し,経穴刺激理学療法が脊髄神経機能および自律神経機能に与える影響を検討した。本研究に同意を得た健常者10名,平均年齢30.3歳を対象とし,左側正中神経刺激のF波を左母指球筋より導出した(安静試行)。次に,左母指球筋の筋緊張抑制を目的として,手太陰肺経の尺沢への経穴刺激理学療法を実施し,F波を左母指球筋より導出した(経穴刺激理学療法試行)。経穴刺激理学療法が終了した直後(刺激終了直後試行),10分後(刺激終了10分後試行)においてもF波を測定した。F波測定項目は,出現頻度振幅F/M比,立ち上がり潜時とした。また,F波と同時に,安静試行,刺激終了直後試行,刺激終了10分後試行時に心拍数と心拍変動の交感神経活動の指標といわれているLF/HFを計測した。F波の出現頻度,振幅F/M比,立ち上がり潜時のすべてにおいて安静試行と比較して,全試行で有意な変化を認めなかった。しかし,出現頻度は刺激終了直後試行より徐々に低下傾向を認め,振幅F/M比は経穴刺激理学療法試行,刺激終了直後試行において安静時より増加傾向であったが,刺激終了10分後試行で刺激終了直後試行と比較して低下傾向となった。心拍数LF/HFも安静試行と比較して,刺激終了直後試行,刺激終了10分後試行において有意な変化を認めなかった。しかし,刺激終了直後試行,刺激終了10分後試行のLF/HFは安静試行と比較して低下傾向であった。本研究の結果,統計学的には有意差は認めないが,脊髄神経機能の興奮性を示すF波の出現頻度は刺激終了後より抑制傾向を示し,LF/HFは刺激後に安静時と比較して抑制傾向であった。そのため,今回の尺沢への経穴刺激理学療法(抑制手技)は,刺激後に脊髄神経機能を抑制する傾向に,交感神経機能を抑制する傾向に作用することが示唆された。
2013-04-20

経穴刺激理学療法の効果に関する基礎的検討 : 尺沢への抑制手技が母指球筋のF波および自律神経機能に与える影響(平成23年度研究助成報告書)

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