教職の病理現象にどう向き合うか : 教育労働論の構築に向けて(<特集>ゆらぐ教員世界と教職の現在)
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概要
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教職における病気休職者増加を説明する理論が見当たらない理由の一一つは,教職を公務労働(教育公務員)として認識する視点が欠落していることによる。本論文では,第一に,感情労働論・ケアワーク論を手がかりに,共同体で営まれていた<人を育てる>という活動が職業となることについての問題を,クライアントとの関係という点から検討する。そこでは,教育的な関係や言説において,絶えず情緒や感情が重視されることの理由が示される。第二に,そうした子どもとの教育的関係が,公務員として雇われて働く「労働過程」のなかにおかれていることに起因する問題を,感情労働論の議論を借りて考察する。そして第三に,現在の新自由主義的な改革の中で,公務員改革の一貫として進められている教職の様々な改革が,教師の教育活動を変容させていること,しかしながら第四に,こうした趨勢に対応する抵抗主体としての教員集団が存在していないことの問題を指摘する。病める教師の増加は,教育という活動を共同体的な「教師-子ども関係」の認識にとどめ,「教育労働」に無自覚であることや,「小さな国家」への移行によって教育労働が変容しているという現状を認識できないことのなかで,自らに過重に責務を負わせたことから生じているといえる。教育社会学における教師研究は,教師がこうした状況や構造を侑緻する視点を提供するという点で,他の教師研究と差異化して展開されるべきだろう。
- 日本教育社会学会の論文
- 2010-06-30
著者
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