国立科学博物館に最近収蔵された異常型鱗翅類標本について

概要

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チョウやガの異常型が出現する確率はどの程度のものであろうか。これにその個体が人間によって採集される確率を掛け合わせると,その個体が標本として残される確率が出てくる。その標本の生物学的意義はともかく,きわめて稀にしか得ることができない,貴重なものであることは云うまでもない。考えて見ると私はここ30年ほどにわたって灯火採集を限りなくやってきたが,雑誌に報告できるような異常型を採集した記憶がほとんどない。もちろん採集をしている時は,異常型を意識していることはないので,目の前に止まっているガの異常に気づかないこともあるだろう。大量に飛来しているガを前にしては,それも無理からぬことである。最近ベトナムで採集したシヤクガやスズメガの異常型は,まるでガが飛んで来なかった晩の採集品であったと記憶している。また,その少し前にはカラスアゲハの性モザイクを採集する機会もあった。昼間に活動し,ネットに入れて採集するチョウの方が異常型ははるかに発見されやすいのであろう。このほか,記録に残しておきたい異常型個体もいくつか国立科学博物館に寄贈されいる。
1999-03-30