青森県で発見されたクルマアツバ亜科のカサイヌマアツバ(新称)(ヤガ科)について
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概要
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チョウセンコウスグロアツバ群はZanclognathatのなかで, 雄の触角のこぶがたいへん大きいことや, 前脚の特化がすすんでいること, 雄の交尾器のvalvaが単純なことなどで区別でき, よくまとまった群を形成している。しかし, 種の同定はかなりむずかしい。日本には今までに3種が知られていたが, このほど, 青森市の葛西充氏のコレクションのなかに, 朝鮮半島から記載された種Z. perfractalis BRYKを見いだした。また, あらためて手もとの標本を詳査したところ, 群馬県南部の沼沢地でも同じ種が1頭採集されていることが判明したので, カサイヌマアツバと命名し, 再記載をして記録した。 所検標木 : 青森県西津軽郡木造町平滝沼, 5♂, 14.VII.1982,3♂, 25.VII.1981,葛西充採集;群馬県邑楽郡板倉町, 1♂, 19. VI. 1960,大塚依久採集。 本種はコウスグロアツバZ. southiとチョウセンコウスグロアツバZ. leechiとにたいへんよく似ているが, 雄の触角が櫛歯状で, 繊毛状の触角のチョウセンコウスグロアツバと区別ができ, コウスグロアツバとは, 前翅の地色がより灰色を帯び, 外横線がなめらかに屈曲することで, 区別は可能であるが, 交尾器を検討すればより確実な同定ができる。 カサイヌマアツバは, 形態的に見てコウスグロアツバにもっとも近縁なものと考えられる。この2種の雄の交尾器のvalvaのsacculusには小さいながら突起が見られるが, これはZanclognathaの基本的形態であり, これが完全に消失したウラジロアツバとチョウセンコウスグロアツバのほうが, より特化していると考えられる。 チョウセンコウスグロアツバ群に属する種の多くは, 平地草原に生息している。ウラジロアツバZ. stramentacealisの斑紋は淡色となり, 開けた草原に適応したものになっている。一方, コウスグロアツバの斑紋は黒褐色で, 普通のZanclognathaと変りはない。生息地も平地に限られることはなく, 低山地の樹林帯でも採集されている。これにたいして, チョウセンコウスグロアツバとカサイヌマアツバは, 湿生植物の繁茂した沼沢地に生息するようであるが, ウラジロアツバに見られるような斑紋の特化は起こっていない。
著者
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