マウライ国における熱帯熱マラリア感染に対する抗マラリア薬剤効果 : chloroquineよりsufladoxine/pyrimethamineへの変更7年後の経過
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概要
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マラウイでは,熱帯熱マラリア患者のchloroquine治療失敗例の増加に伴い,1993年からsulfadoxine/pyrimethamine (SP)がchloroquineに代り導入された.この変更から7年後,我々はサリマ地区の無症候性熱帯熱マラリア感染学童においてin vitroおよびin vivo抗マラリア剤効果,またそれぞれpyrimethamineおよびsulfadoxine耐性と関連する原虫dihydrofolate reductase遺伝子(dhfr)およびdihydropteroate reductase遺伝子(dhps)変異について検討した.対象学童は無作為にchloroquine 3日間の標準投与群(n=50)ないしはSP一回投与群(n=40)に分けられ,治療後28日間にわたり経過が追跡された.In vivoにおけるchloroquineおよびSP感受性率はそれぞれ92%および83%であった.分離熱帯熱マラリア原虫株のin vitro薬剤感受性はSP(n=52),pyrimethamine(52),quinine(36),mefloquine(17)およびamodiaquine(14)に対して検討された.分離株の92%がpyrimethamine耐性を示したにも関わらず,85%はSP感受性であった.Quinineおよびmefloquineに対して検討したすべて,およびamodiaquineに対する93%の分離株はin vitro感受性であった.173例の熱帯熱マラリア感染において,3重変異Asn-108/Ile-51/Arg-59 dhfrおよび2重変異Gly-437/Glu-540 dhpsを持つ原虫が高頻度(78%)で認められた.これらの結果は治療薬剤変更に伴う薬剤圧の減少が原虫chloroquine感受性の回復をもたらしたことを示唆した.高度のpyrimethamineに対するin vitro耐性は高頻度にdhfr3重変異が見られたことと一致した.それにもかかわらず観察された高いSPの効果は,高度pyrimethamine耐性原虫におけるsulfadoxineおよびpyrimethamine間の相乗作用の重要性を示唆した.
- 東京女子医科大学の論文
- 2003-02-25
著者
-
小早川 隆敏
東京女子医科大学国際環境・熱帯医学教室
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金子 明
東京女子医科大学・医学部
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塚原 高広
千葉市立
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塚原 高広
東京女子医科大学医学部国際環境・熱帯医学
-
美田 敏宏
東京女子医科大学医学部国際環境・熱帯医学
-
金子 明
東京女子医科大学医学部国際環境・熱帯医学:スウェーデンカロリンスカ病院感染症科
-
金子 明
東京女子医科大学
-
BWIJO Bwijo
東京女子医科大学医学部国際環境・熱帯医学
-
LUM Jeffrey
東京女子医科大学医学部国際環境・熱帯医学
-
ZUNGU Innocent
マラウイ国保健省公衆衛生研究所
-
小早川 隆敏
Department Of International Affairs And Tropical Medicine Tokyo Women's Medical University
-
小早川 隆敏
東京女子医科大学国際環境・熱帯医学
-
塚原 高広
東京女子医科大学
-
小早川 隆敏
東京女子医科大学
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Bwijo Bwijo
東京女子医科大学
-
Zungu Innocent
マラウイ国立公衆衛生研究所
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