米国ルイジアナ州におけるHIV/AIDS感染者とクリプトスポリジウム症の相関関係についての流行調査
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概要
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クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)の人体寄生例が初めて報告されたのは1976年であったが,病原体として本格的に認識されるに至ったのは後天性免疫不全症候群(AIDS)に伴う日和見感染症としてである.1982年にはAIDS下痢患者にクリプトスポリジウム症の重症例が多数みとめられ,種々の抗生剤および抗原虫剤を投与しても治癒しないことが報告された.また,衛生管理先進国である米国において水質環境汚染や水道水供給システムの不備などに起因するクリプトスポリジウム症の大規模な流行が多発している.このような状況の中で全米第9位のAIDS感染率と第12位のAIDS患者数を抱えるルイジアナ州ではクリプトスポリジウム症の疫学的調査とそのデータ公開が感染状況の把握および予防対策に必要不可欠であるとの見地に立ち,ルイジアナ州公衆衛生局と米国疾病管理予防センター(CDC)によるASDスタディを基にした水質・環境衛生管理システムが確立されている.CDCはルイジアナ州において1997年に新たに904人のAIDS患者,1,338人のHIV感染者が確定診断され,同州のHIV感染者およびAIDS患者の総計は9,830人,そのうち4,414人がAIDS患者と診断されたと報告している.さらにCD4値が200cell/μl以下のルイジアナ州AIDS患者にクリプトスポリジウム症との強い相関関係が米国他州同様にみとめられ,水質汚染が原因とされるクリプトスポリジウム症感染は1998年のルイジアナ州の疫学調査によるとニューオリンズ市のHIV感染者のうち14人にみとめられた.このような現況を踏まえて過去10年間(1989〜1998)に渡るルイジアナ州HIV/AIDSサーベイランスを軸に年齢,人種,性別,抗AIDS治療の有無,CD4値などを考慮したHIV感染者とAIDS患者に対するクリプトスポリジウム症感染の疫学調査の概略を報告する.
- 2001-03-25
著者
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小早川 隆敏
東京女子医科大学国際環境・熱帯医学教室
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楽得 康之
米国チューレン大学国際医療センター
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楽得 康之
米国チューレーン大学医療センター公衆衛生熱帯医学大学院熱帯医学部
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小早川 隆敏
Department Of International Affairs And Tropical Medicine Tokyo Women's Medical University
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小早川 隆敏
東京女子医科大学国際環境・熱帯医学
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小早川 隆敏
東京女子医科大学
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