米国ルイジアナ州ニューオリンズ市における公衆衛生局によるHIV/AIDSサーベイランスプログラムの試み
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概要
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WHO(世界保健機構)は1996年度の全世界におけるHIV感染症の累計総数を2,940万人,AIDS患者840万人と報告している.また,CDC(疾病管理予防センター)の報告(1996年12月30日)によると,米国内ではHIV感染者58万人,AIDS患者22万人が報告されており,このような現状の中でCDCを中心とした米国州単位のHIV/AIDSサーベイランスシステムが確立されいる.しかしながら,HIV/AIDSサーベイランスは複雑な過程と多面性が交錯し,対象についても病院の臨床検査室,外来診療,死体安置所,さらには囚人までを含む先進的コンピューターシステムが要求される.その典型例として,ルイジアナ州ニューオリンズ市では公衆衛生局の疫学者を中心にチューレーン大学医療センターとルイジアナ州立大学医学部のACTU(AIDS臨床研究グループ)の指導の下,基幹病院であるチャリティ病院内でCDCのHARSデーターべース,ASDスタディによるAIDSサーベイランスが展開されており,医療先進国である米国のコンピューターシステムによるHIV/AIDSサーベイランスを公衆衛生学的見地から報告する.CDCのHARSシステムは米国50州および6大主要都市において多目的サーベイランスとして公的,私的,政府機関を問わず,HIV/AIDS患者の総数をモニターすることを目的としており,その内容は地域,人種,感染危険度,年齢,性別等,多岐に渡り報告される.ASDスタディは指定機関で治療を受けた外来・入院HIV患者の多種多様の免疫状態を反映している.これらより,サーベイランスプログラムはその地域におけるHIV感染進展度をモニターするものでなければならず,効果的なサーベイランスプログラムとはモニタリングとともに時代の変化を認識するものであり,ルイジアナ州ニューオリンズ市の公衆衛生局のHIV/AIDSサーベイランスは,社会環境変化に対応した情報伝達の意義と分析能力を求められ確立されたといえる.
- 1998-12-25
著者
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小早川 隆敏
東京女子医科大学国際環境・熱帯医学教室
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楽得 康之
米国チューレン大学国際医療センター
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楽得 康之
米国チューレーン大学医療センター公衆衛生熱帯医学大学院熱帯医学部
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小早川 隆敏
Department Of International Affairs And Tropical Medicine Tokyo Women's Medical University
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小早川 隆敏
東京女子医科大学国際環境・熱帯医学
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小早川 隆敏
東京女子医科大学
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