ADI(一日許容摂取量)レベルの食品添加物(保存料)によるウサギ血小板機能に対する影響
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概要
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目的 食品には数多くの添加物が使用されている。それらのなかには添加濃度により毒性を発現するものも知られており,これらについては厳しい規制が必要である。食品添加物として広く使用されている保存料もその濃度によっては有害となるためその使用については厳しい規制が設けられている。保存料の使用は食品の変質,腐敗防止などの添加物本来の目的のみならず,食品流通の拡大,価格安定などの面において大きな役割を果たしている。現在食品添加物の安全性の指標としてはADI(一日許容摂取量)が使用されている。ADIは動物による慢性毒性実験をもとに決められており,細胞レベルでの影響についてはほとんど報告されていない。著者らはこれまで種々の環境化学物質についてウサギ血小板を用いそれらの日常摂取レベルが細胞に及ぼす影響について検討し報告してきた。また,食品添加物に関してもADIレベルや現行の添加濃度レベルで血小板機能に影響を与える化合物があることを報告してきた。今回は保存料についてそのADIレベルがウサギ血小板機能に及ぼす影響についてin vitroならびにex vivoで検討した。 実験方法 保存料として,安息香酸ナトリウム,ソルビン酸カリウム,パラオキシ安息香酸ブチル,およびデヒドロ酢酸ナトリウムを用いた。トロンボキサンB_2(TXB_2)抗体は米国ケンタッキー大学薬学部H.-H.Tai教授より供与いただいた。被験化合物は10^<-5>〜10^<-8>Mの濃度でDMSOあるいはTyrode液(pH7.4)に溶解して使用した。ウサギ洗浄血小板の調整は既報に準じて行ない,最終的にMg^<2+>,Ca^<2+>を含まないTyrode液(pH7.4)に懸濁して実験に用いた。血小板の活性化は反応溶液(Tyrode)1ml中の血小板が2x10^7個になるように調整し,A-23187(1μM)あるいはトロンビン(1U)をそれぞれ単独あるいは種々の濃度の被験化合物とともに37℃で5分間インキュベートすることにより行った。また,血小板を上述のアゴニストを添加しないでインキュベートしたものをコントロールとした。反応液を氷冷下反応停止し直ちに遠心分離を行い,その上澄み液についてEnzyme immunoassayによりTXB_2を測定した。血小板を各種化合物で前処置する実験においては,血小板を化合物とともに37℃で5分間インキュベートした後,上記アゴニストを添加し活性化した。また,前処置後遠心分離により化合物を含む溶液と血小板を分離後,新しい反応液に血小板を験だくしアゴニストを添加して活性化した。各種添加物添加職によるex vivo実験においては通常飼育のウサギに,各化合物のADI相当量(デヒドロ酢酸については慢性毒性実験における使用量の1/100)を連続5日間摂取させ,6日目に血小板サンプルを調整し前述の方法によりその活性化の程度を測定した。 結果 1. in vitro実験結果 血小板を,種々の濃度の各添加物共存下でA-23187にあるいはトロンビンで刺激した場合,A-23187刺激に対しては使用した化合物のうちソルビン酸カリウムおよびパラヒドロキシ安息香酸ブチルが10^<-6>M以上でTXB_2産生を有意に抑制した。一方,トロンビン刺激によるTXB_2産生に対しては使用した全ての化合物が抑制作用を示し特に,ソルビン酸カリウム,パラヒドロキシ安息香酸ブチルならびにデヒドロ酢酸ナトリウムは実験に使用した全添加濃度で産生の有意な抑制が観察された。各添加物による前処置実験ではA-23187刺激に対してはすべての添加物が抑制効果を示した。また,A-23187およびトロンビン刺激に対するパラオキシ安息香酸ならびに,トロンビン刺激に対する安息香酸ナトリウムの抑制作用は当該化合物を洗浄除去後も消失しなかった。2. ex vivo実験結果 各種添加物のADI相当量を,食餌とともに連続5日間摂取させたウサギから調整した血小板では,安息香酸ナトリウムおよびパラオキシ安息香酸ブチル添加食群においてトロンビン刺激に対する有意なTXB_2産生の抑制が観察された。
- 1995-10-01
著者
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