人間にとって学習しやすい音楽の一条件(コミュニケーション支援(3),HCGシンポジウム)

概要

論文の詳細を見る
生得的な制約を反映した特徴をもつ音階(scale)は、そうでない音階よりも、人間にとって習得が容易であると考えられる。では、その特徴とはどのようなものであろうか。本実験では、小泉文夫(1958)によって音階の普遍的な特徴であると指摘されている「完全4度枠(Perfect 4th Interval Frame)」を含む音階が、そうでない音階よりも容易に学習できるかどうかを検討した。実験参加者は、完全4度枠を含む人工音階か、含まない人工音階かのどちらかから作成されたメロディを70分間exposureされた。そして、そのexposureの前と後で、各人工音階の非音階音を検出する実験テストを受けた。完全4度枠を含む音階にexposureされた参加者の成績は、完全4度枠を含むメロディに対してのみ有意なexposureの効果を示した。ただし、その効果は正の効果ではなく、負の効果であった。一方、完全4度枠を含まない音階にexposureされた参加者の成績は、いずれのメロディに対しても有意なexposureの効果を示さなかった。これらの結果は、完全4度枠を含む音階に対する感受性が、そうでない音階に対するよりも、高いことを示唆しているといえる。
2009-03-16