ヒメイトアメンボの捕食能力,発育および産卵能力
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概要
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ヒメイトアメンボは,水田に生息する水生カメムシの1種である.本研究では,本種の飼育条件下における捕食行動を明らかにするとともに,餌昆虫の1つであるセジロウンカに対する天敵としての能力を評価すること,長日条件下(16時間明期,8時間暗期)において,23℃,25℃,30℃,35℃の異なる飼育温度における本種の繁殖能力を評価した.餌昆虫の密度に対する本種の機能の反応は,セジロウンカ,キイロショウジョウバエいずれを供試した場合も飽和型を示し,セジロウンカに対する日あたり攻撃量の最大値は1.65個体,キイロショウジョウバエに対しては1.48個体であった.捕食率(捕食数餌/密度)は,両餌昆虫とも捕食数の増加とともに減少した.セジロウンカを供試した場合の寄主発見能力,攻撃摂食時間,攻撃摂食時間から予想される日あたり攻撃量の限界値は,キイロショウジョウバエを供試した場合に比べて高かった.本種の産卵行動は,水面上や容器壁面,キムワイプ上に1卵ずつ行われた.本種の産卵前期間は,およそ1〜2日であった.産卵期間は,23℃区で10.5日,25℃区で20.8日,30℃区で19.5日,35℃区で7.5日となり,25℃区と30℃区における産卵期間は23℃区と35℃区のそれらとの間に有意差は認められなかったものの,後者では産卵期間が短くなる傾向が示された.1メスあたりの平均総産卵数は,23℃区で100.8卵,25℃区で186.2卵,30℃区で223.2卵,35℃区で55.4卵となり,23℃区および35℃区における1メスあたりの平均総産卵数は25℃区,30℃区に比べて少ない傾向を示した.卵から成虫までの生存率は,25℃区で最も高く,次いで23℃区,30℃区の順で35℃区は,全卵が孵化しないか孵化失敗により死亡した.本種の卵期間は,23℃区で8.7日,25℃区で7.4日,30℃区で5.9日であり,飼育温度が高くなるにつれて有意に減少した.幼虫期は,通常5齢までであったが,25℃区,30℃区において各1個体,計2個体のみ幼虫期が6齢の個体が見られた.1齢から終齢までの幼虫期間は,23℃区で15.6日,25℃区で13.1日,35℃区で10.9日であり,温度が高くなるにつれて有意に減少した.
- 2007-03-25
著者
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松浦 朝奈
School of Agriculture, Tokai University
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岩田 眞木郎
School of Agriculture, Tokai University
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村田 浩平
九州東海大学農学部応用植物科学科
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岩田 眞木郎
九州東海大学農学部
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松浦 朝奈
九州東海大学農学部農学応用植物科学科
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岩田 眞木郎
School Of Agriculture Tokai University
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松浦 朝奈
九州東海大学総合農学研究所
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村田 浩平
九州東海大学農学部応用昆虫学研究室
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村田 浩平
九州東海大・総農研
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村田 浩平
九州東海大学農学部農学応用植物科学科
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