阿蘇カルデラ内, 瀬田裏におけるハナバチ類の生態的調査
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概要
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1986年より1989年までの4年間, 阿蘇カルデラ内, 瀬田裏において, 3月より11月まで, 月3回, 10 : 00から12 : 00まで, 花粉媒介昆虫としての利用の可能性を有する種を選抜するための基礎的資料を得る目的で, ハナバチ相の組成, 季節消長, 訪花性についての生態的調査を実施した.1.採集されたハナバチは, 4年間で7科21属80種3234個体であった.2.瀬田裏におけるハナバチ総種類数は, 80種を若干上回る程度であると推測される.3.種数においては, 各年共にコハナバチ科の割合が最も高く, ついでコシブトハナバチ科の順であった.個体数においても, 年によって順位の入れ代わりはあっても両科が1, 2位を占め, 個体数でのコシブトハナバチ科の割合の高さが特徴であった.4.優占種として認められたのは, 4年間の総計でみた場合15種であった.その中で, 各年を通して最優占種はCt. japonicaで, 2位の種と有意差を持ち圧倒的に優勢な種であった.5.阿蘇カルデラ内のハナバチ相は, 緯度によってハナバチ相が推移していく中で, 南方傾向を示すものであると考えられる.6.季節消長において, 個体数ではメス, オス共に2山型の発生消長を示したが, 種数では盛夏における減少がみられず, 顕著な発生の山が認められなかった.そして, 種数・個体数共に, 開花季節を通してのコシブトハナバチ科の多さが特徴的であった.7.4年間の総計での優占上位5種の季節消長において, Tt. mitsukuriiは訪花活動期が短く, 最優占種Ct. japonicaを含む他の4種は開花期間のほぼ全般にわたって訪花活動を行っていた.8.被訪花植物は, 23科69種であった.ハナバチ類の訪花頻度が高い植物はキク科, マメ科, バラ科で, これら3科への訪花個体数は全体の66.3%を占めた.9.被訪花度の高い植物種は, ヤマハギ, ヒメジョオン, テリハノイバラ, ヤクシソウ, スイカズラなどで, 上位10種植物への訪花個体数は全体の58.6%を占めた.10.ハナバチ類の訪花は, 各ハナバチ種の花に対する選好性, 植物の開花期間と訪花活動期および出現個体数との関係, 花型と中舌の長さとの関係などにより成り立っているものと考えられる.11.人間による採草という行為は, 一部のハナバチ類にとって効果的な営巣環境の維持, あるいは拡大をはかるものと思われる.12.花粉媒介者としては, Ct. japonica, Ct. flavipesの2種が, その訪花性および営巣性より, 特に閉鎖環境において, 利用の可能性が高いと思われる.
- 1997-09-25
著者
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