オオルリシジミの分散性と死亡要因における卵寄生蜂の評価
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概要
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オオルリシジミは、本州と九州に生息地が限られ、絶滅の危機に瀕している種として環境省により絶滅危慎I類に分類されているチョウである.本研究では、本種の貴重な生息地となった阿蘇地域においてその卵寄生蜂であるタマゴコバチ科の1種Trichogramma sp.の生息地ごとの寄生率の違いとオオルリシジミの生息数ならびに分散性との関係を明らかにするための資料を得ることを目的として実施し次のような結果を得た.なお、本種の個体数推定には、標識再捕法を用いた.(1)南向きの斜面の本種の生息地における卵寄生蜂の寄生のピークは、他の方位の斜面の生息地よりも早かった.(2)本種の卵死亡率は産卵期間後期に高くなった.(3)Trichogramma sp.は、オオルリシジミの個体数が多い生息地では翌年の発生に大きな影響を及ぼさないが、オオルリシジミの生息数が少ない生息地では重要な天敵の1つであることが示唆された.(4)本種の幼虫期における共食いは、クララの花穂上における本種幼虫の密度が高くなった場合、本種の重要な死亡要因の1つである可能性が示唆された.(5)本種の成虫は、羽化した場所付近に留まる傾向が見られ、阿蘇内輪山を越える分散は確認できなかった.これらのことから、本種個体群を維持していくためには、Trichogramma sp.の寄生率の推移をモニタリングすることならびに本種の共食いの頻度に関する詳細な調査が必要であることが示唆された.
- 2011-03-00
著者
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