紀伊半島三の公トガサワラ原生林の種組成,林分構造と更新特性(予報)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
奈良県吉野郡川上村にある国指定天然記念物の三の公トガサワラ原生林にて,トガサワラ林の種組成,林分構造と更新特性(球果生産,実生の定着過程,幼木の出現状態)について地形条件(広い緩斜面と傾斜と幅の異なる尾根)の異なる4林分で調査した。調査林分には8種の針葉樹類が出現したが,その中でモミ,アカマツ,ゴヨウマツ,トガサワラ,ツガが林冠層を優占していた。針葉樹類の出現状態とサイズ構造は地形条件によって大きく異なった。ツガのみが地形条件に関わらず出現した。マツ類の出現は急傾斜の尾根に限られた。トガサワラは斜面では出現せず,その優占度は尾根の傾斜の増大と幅の狭さとともに高まった。ゴヨウマツとともにトガサワラの自己維持的な林分は亜高木層を欠く急傾斜の幅の狭い尾根で認められた。常緑カシ類の発達した亜高木層は針葉樹類の更新を抑制しており,ギャップの形成が針葉樹類の更新に必要であった。球果生産,実勢の出現やその生存状態から判断して,トガサワラの繁殖力は他の針葉樹類と比較して必ずしも弱くないようである。
- 1992-06-30
著者
関連論文
- 中国地方,若杉ブナ林における林冠ギャップ特性とギャップ更新
- 都市近郊コナラ林の構造と動態(III) : リターフォール量の年変動と季節変化
- 都市近郊コナラ林の構造と動態(II) : 林内における3年間のコナラ実生の動態
- 都市近郊コナラ林の構造と動態(I) : 林分構造とコナラの個体群特性
- サワラの2タイプの栄養繁殖について
- ヒノキ人工林における天然生ヒノキ稚樹の個体群動態(VII) : 実生の初期生長
- ヒノキ人工林における天然生ヒノキ稚樹の個体群動態(VI) : 実生の死亡要因とその作用様式の検討
- ヒノキ人工林における天然生ヒノキ稚樹の個体群動態(V) : 実生の発育と生存過程
- ヒノキ人工林における天然生ヒノキ稚樹の個体群動態(IV) : 実生の発生過程
- ヒノキ人工林における天然生ヒノキ稚樹の個体群動態(III) : 林床における種子個体群の動態
- ヒノキ人工林における天然生ヒノキ稚樹の個体群動態(II) : 当年生稚樹の死亡要因
- ヒノキ人工林における天然生ヒノキ稚樹の個体群動態(I) : 林内における当年生稚樹の死亡過程
- 中国地方におけるブナの結実(II) : 種子の稔性と形質について
- 中国地方におけるブナの結実(I) : 着果調査
- 四国・佐田山常緑広葉樹林における林冠ギャップとギャップ更新(予報)
- 閉鎖林冠下と林冠ギャップ下でのヒノキとサワラの幼木樹型
- 赤沢自然休養林におけるアスナロ下層木の出現パターン
- サワラ老齢林の閉鎖林冠下および林冠ギャップ下におけるサワラの栄養繁殖パッチの出現パターンとサイズ構造
- 赤沢自然休養林内サワラ林分の異なる地床上でのサワラ実生の定着
- 赤沢自然休養林の異なる微環境におけるヒノキ実生の定着
- 木曾赤沢自然休養林におけるヒノキ属老齢林の構造と動態
- コナラ二次林におけるヒサカキ(Eurya japonica) の種子散布特性
- 紀伊半島三の公トガサワラ原生林の種組成,林分構造と更新特性(予報)
- 数理生物学入門 生物社会のダイナミックスを探る, 巖佐庸著, B5版350ページ, HBJ出版局, 東京, 1990年, 3,900円
- 攪乱跡地におけるヒサカキ(Eurya japonica)の実生定着と萠芽再生
- 伐採当年のヒサカキ(Eurya japonica)の萌芽再生
- 自然撹乱と森林群集の安定性