木曽川感潮域における絶滅危惧植物タコノアシの分布特性と生育適地
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概要
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木曽川感潮域の自然堤防帯からデルタ帯への移行帯において、絶滅危惧植物タコノアシPenthorum chinense Pursh(ユキノシタ科)の生育適地を解明することを目的に調査を行った。本調査地は、河床勾配が緩やかなことに加え、様々な人為的インパクトの影響で河床が全体的に安定傾向にある。これまで本種は、河川では自然攪乱にさらされやすい澪筋沿いの明るく開けた立地に出現すると報告されている。しかし草本植物全体の分布特性について検討した結果、タコノアシは比高が高く地表攪乱の痕跡のないアカメヤナギ群落の林縁や林床で多く確認された。このことから本調査地では、タコノアシは地表攪乱以外の要因によって個体群を維持していると考えられた。タコノアシの成長と開花に影響を及ぼす環境要因を、最尤推定法の変数選択で検討した結果、表層堆積物硬度がすべての統計モデルで選択され、標準化推定値も大きかった。個体の地上部乾燥重量と枝数、開花個体数、花梗数は、表層堆積物が軟らかく、上層の開けた明るい泥湿地的環境で増加する傾向を示した。本調査地でタコノアシの成長と開花が良好な環境は、堆積物硬度が0.16〜0.82kg/cm^2、7月のRPPFDが20〜60%、1日の冠水時間が3.97〜5.84h、表層の細粒堆積物厚が32〜40cm、表層堆積物の中央粒径が0.048〜0.053mm、淘汰度が1.24〜1.79であった。比高の低い立地にも表層堆積物が軟らかく上層の明るい環境は存在したが、そこではヨシやマコモ、ミズガヤツリの優占群落が成立しており、タコノアシの出現個体数は少なかった。冠水・塩水ストレスが本種の分布制限要因とは考えにくく、比高の低い立地でも生育は可能と推察されることから、タコノアシの分布特性を解明するためには、種間関係を含めたさらに詳細な検討が必要である。
- 2008-11-30
著者
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大野 啓一
横浜国立大学環境情報研究院
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大野 啓一
横浜国立大学環境科学研究センター
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大野 啓一
横浜国立大学院環境情報研究院
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大野 啓一
横浜国立大学大学院環境情報研究院
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大野 啓一
横浜国大
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比嘉 基紀
横浜国立大学大学院環境情報学府
-
師井 茂倫
横浜国立大学大学院環境情報学府
-
酒井 暁子
横浜国立大学大学院環境情報研究院
-
酒井 暁子
東北大 大学院理学研究科
-
酒井 曉子
東北大学大学院理学研究科
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比嘉 基紀
横浜国立大学大学院環境情報研究院
-
酒井 暁子
横浜国立大学
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比嘉 基紀
Graduate School of Science, Kochi University
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大野 啓一
横浜国立大学
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