本州中部太平洋側におけるブナ林の種組成と気候および地質条件との関係
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概要
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1.本州中部の太平洋側を対象にブナ林の植生単位とその立地条件のうち気候および地質条件を把握し,対応関係を調べた.2.本地域のブナ林からは,3群集1群落7亜群集2亜群落が識別された.確認された植生単位は,スズタケ-ブナ群集と,その下位単位の典型亜群集,ナツツバキ亜群集,オクモミジハグマ-ブナ群落とその下位単位の典型亜群落,イヌブナ亜群落,ヤマボウシ-ブナ群集とその下位単位の典型亜群集,ヤマトリカブト亜群集,ヒメシャラ亜群集,コアジサイ-ブナ群集とその下位単位の典型亜群集とミヤマタニソバ亜群集である.3.植生単位と気候条件の間に明瞭な対応関係が見られた.スズタケ-ブナ群集とオクモミジハグマ-ブナ群落典型亜群落は,WIとCIがともに低い地域に分布し,さらに,スズタケ-ブナ群集は降水量の多い地域に,オクモミジハグマ-ブナ群落は降水量の少ない地域に分布していた.ヤマボウシ-ブナ群集はWIとCIが高く,降水量も年間を通して多い地域に分布しており,コアジサイ-ブナ群集は最もWIとCIが高く,降水量も多い地域に分布していた.4.植生単位と地質条件の間に対応関係が見られた.スズタケ-ブナ群集,オクモミジハグマ-ブナ群落は中生界堆積岩類の山地に成立していた.ヤマボウシ-ブナ群集典型亜群集とヤマトリカブト亜群集は新第三系火山岩類,ヤマボウシ-ブナ群集ヒメシャラ亜群集とコアジサイ-ブナ群集は第四紀火山岩類の地域に成立していた.5.本州中部太平洋側のブナ林では,群集レベルの種組成の違いは,気候条件と地質条件の両方が影響することで生じる.亜群集レベルの種組成の違いは,分布域の広いオクモミジハグマ-ブナ群落やヤマボウシ-ブナ群集では,群集の分布域内の温度傾度に沿ったもので,分布範囲が狭いスズタケ-ブナ群集やコアジサイ-ブナ群集では,湿性立地のような土地的な条件により生じると考えられた.
- 植生学会の論文
- 2003-06-25
著者
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大野 啓一
横浜国立大学環境情報研究院
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大野 啓一
横浜国立大学環境科学研究センター
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大野 啓一
横浜国立大学大学院環境情報研究院
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大野 啓一
横浜国大
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池田 正
株式会社建設環境研究所
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大野 啓一
横浜国立大学
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