中国における個別農家の林業経営に関する実証的研究 : 中国河北省囲場県T村を事例として
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概要
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本論文は,中国において1980年代以降に発達した非公有制林業の主要部分の1つである個別農家の林業経営について,従来ほとんど実施されてこなかった農家調査(調査地:河北省囲場県城子郷T村)によって,実証的に明らかにすることを課題とした。これによって明らかにされたことは次の諸点である。(1)調査集落の個別農家による林業経営は,その成立時期・内容によって2つに大別することができる。1982年におこなわれた無立木地の均等分割によって生じた「長期的経営」は,現在は林木の撫育段階にあって農家経営を支えるには至っていない。また,わずかの上層農以外は当初の規模から拡大することはできていない。1990年代後半から伐採可能地を請け負った「短期的経営」は,近い将来に木材を販売し農家経済の1つの収入源となることが可能である。(2)いずれの場合も,林地保有規模を大きくできるのは高額の契約金を負担できる上層農であり,林業経営が現在すでに存在する農家間所得格差をいっそう拡大する原因となることが予想される。所得格差を制御し下層農の底上げを図ることが,中国の個別農家による持続可能な林業経営の発展の主要課題である。
- 林業経済学会の論文
- 2005-03-01
著者
-
野口 俊邦
信州大学農学部
-
谷 建才
河北農業大学
-
〓 涛
岐阜大学大学院連合農学研究科:信州大学
-
三木 敦朗
岐阜大学大学院連合農学研究科
-
三木 敦朗
信州大学農学部
-
野口 俊邦
信州大学
-
三木 敦朗
岩手大学ESD推進事務局
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