幼児の「心の理論」の発達に対するきょうだいおよび異年齢保育の影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,3〜5歳の幼児を対象に異年齢の子どもとの接触経験による「心の理論」の発達への影響を検討した。Perner,Ruffman,& Leekam (1994)の「きょうだい間感染説」では,きょうだいの存在が「心の理論」の発達を促進するとされている。しかし,子どもの他児との接触経験はきょうだいに限らない。そこで本研究では,異年齢保育実施の保育園に通うきょうだいのいない子ども(一人っ子)17人,いる子ども40人,同年齢保育実施の保育園に通うきょうだいのいない子ども29人,いる子ども39人を対象に,誤信念課題3問(サリーとアンの課題と同型2問,スマーティー課題と同型1問),写真課題などを実施した。その結果,サリーとアンの課題と同型の誤信念課題ではきょうだいの有無と保育形態の交互作用が見られ,同年齢保育を受けていてきょうだいのいない子どもだけが他の群よりも課題通過率が低かった。一方,スマーティー課題と同型の誤信念課題と写真課題ではきょうだいの有無と保育形態の影響は見られなかった。これらの結果は,3〜5歳の幼児にとっては異年齢の子どもとの接触は,それがきょうだいでなくともサリーとアンの課題と同型の誤信念課題で測定されるような特定の「心の理論」の獲得に一定の促進的な影響を与える一方,物的表象を含むような表象操作全般に影響は及ばないと解釈された。
- 2008-10-10
著者
関連論文
- 健常者における前頭葉損傷シミュレーション : WCSTおよび誤信念課題を用いた個人差との関連
- 健常者における前頭葉損傷シミュレーション : ウィスコンシンカード分類課題(WCST)と誤信念課題を用いた個人差との関連
- 幼児の「心の理論」の発達に対するきょうだいおよび異年齢保育の影響
- PA015 誤信念課題と実行機能課題への幼児の反応の関連
- 文化と心の理論 : 比較文化研究データからみた日本の子どもの他者理解(自主シンポジウムF1)
- クロス集計表に対する統計分析の手法 : χ^2検定とFisherの直説法および残差分析と多重比較による下位検定
- 幼児における生物と生命に対する認識の発達
- 縦割り保育の幼稚園における「心の理論」および関連する能力の縦断的研究
- PE01 縦割り保育の幼稚園における幼児の相互交渉との発達 (5) : 数量的分析
- PG10 縦割り保育の幼稚園における幼児の相互交渉との発達 (4) : 事例分析
- 「心の理論」獲得前後の他者の心の理解過程 : 事例分析による検討
- 発達 15-PA3 心の表象的理解 : 自己, 他者, 写真の比較(II) : 物の位置変化条件での検討
- 発達 15-PA2 心の表象的理解 : 自己, 他者, 写真の比較(I) : 物のアイデンティティ変化条件での検討
- 大学生における両親の期待度とその実現度の認知の比較
- 教育学部学生の情報リテラシー教育の最適化に関する研究(II) : 最終回までに学生が獲得したこと
- 教育学部学生の情報リテラシー教育の最適化に関する研究 (I) : 入学直後から 3 カ月後への変化
- PD21 幼児の生物概念と生命概念の研究(2) : 反応時間を指標として
- 幼児期における意識的な視覚的注意反応に対する他者の視線方向の影響 : 手がかりパラダイムによる実験と計算理論的モデルによるコンピュータ・シミュレーションを用いて
- PD04 学童期の自己制御の発達にみる乳幼児期保育実践の類型別効果(発達,ポスター発表D)
- 5歳児と成人を対象とした瞬間的な個数の把握(サビタイジング)に対する言語処理の干渉
- PE87 無関連言語音効果の個人差の検討(2)(教授・学習,ポスター発表E)
- 幼児の誤信念想起に対する課題への関与行為の影響
- 衝動性が高い保育園年長児に対する保育現場での行動支援の事例
- PA100 健常者における前頭葉損傷シミュレーション(2) : ウィスコンシンカード分類課題(WCST)を用いた個人差との関連(障害,ポスター発表A)
- 気分形容詞チェックリストにより測定された覚醒度の検討--アラウザル・チェックリスト(GACL)短縮版の修正
- 気分形容詞チェックリストにより測定された覚醒度の検討 : アラウザル・チェックリスト(GACL)短縮版の修正
- PF27 箱の中の見えないものへの2歳児の反応
- 幼児における自己の誤信念の想起: 誤信念の性質と自己関与の影響
- 幼児における自己の誤信念の想起 : 誤信念の性質と自己関与の影響
- PA022 大学生における両親の養育期待度とその実現度の認知の比較(ポスター発表A,研究発表)
- PD005 幼児期の心の理論の発達に対するきょうだいと異年齢保育の影響(ポスター発表D,研究発表)