全身の健康に関連性をもつ歯周組織の健康状態
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概要
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口腔の健康と全身の健康との関連性が明確でないのは,歯周疾患が定量的に測定されておらず,客観的評価がなされていないためだと考えられる.そこで,本研究では,全身の健康状態と関連性をもつ歯周組織の健康状態を見出すことを目的に,成人における全身の健康診断結果とCPIによる歯周組織診査結果との関連性について検討した.調査対象者は,平成16年に某事業所において実施した歯科健康診断および労働安全衛生法に基づく定期健康診断をともに受診した965名(平均年齢38.1歳)である.全身の健康状態は,収縮期血圧は130mmHg以上,拡張期血圧は85mmHg以上,トリグリセリド値は150mg/dL以上,動脈硬化指数は4.1以上,HDLコレステロール値は40mg/dL未満,総コレステロールは240mg/dL以上,空腹時血糖は110mg/dL以上,HbA1C値は6.5%以上,BMI値は25以上を,それぞれ「異常あり」とした.また,歯周組織の健康状態については,(1)CPIコード0を「良好」,1以上を「不良」とした場合,(2)CPIコード1以下を「良好」,2以上を「不良」とした場合,(3)CPIコード2以下を「良好」,3以上を「不良」とした場合,(4)CPIコード3以下を「良好」,4以上を「不良」とした場合,(5)喪失歯を保有しない者を「良好」,保有する者を「不良」とした場合の5つの条件を設定した.そして,調査対象者を20歳代から50歳代以上までの4つの年齢階級に分け,全身の健康状態を表す各指標が「異常あり」である者の割合を,歯周組織の「良好」群と「不良」群との間で比較した.その結果,歯周組織の健康状態と関連性があった全身の健康状態を表す指標は,トリグリセリド値,動脈硬化指数および拡張期血圧の3項目であった.また,歯周組織と全身の健康状態との関連性が認められた年齢階級は40歳代だけであった.さらに全身の健康状態と関連性があった歯周組織の健康状態を表す指標は,CPIコード0を「良好」,1以上を「不良」とした場合が最も多かった.このことは,CPIコード1以上が全身疾患のリスク因子であるのではなく,CPIコード0が全身の健康因子であることを示していると考えられた.以上の結果から,歯周組織と全身との健康状態の関連性は,疾患と疾患との因果関係の視点からみるのではなく,健康の視点からみる必要性が示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 2008-06-25
著者
-
神原 正樹
大阪歯科大学口腔衛生学講座
-
神原 正樹
大阪歯大・口腔衛生
-
三宅 達郎
大阪歯科大学口腔衛生学講座
-
小室 美樹
大阪歯科大学口腔衛生学講座
-
小室 美樹
大阪歯科大学
-
神原 正樹
大阪歯科大学
-
三宅 達郎
大阪歯科大学
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