総合病院で血液透析を導入した患者の転院時の不安
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概要
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わが国の血液透析患者は,医療技術の進歩に伴い年々直線的に増加している。本研究で協力を得た総合病院でも,維持期の患者には,他施設への転院を依頼することが不可欠である。しかしながら,生活のペースをつかみかけているこの時期の患者にとって,転院は簡単なことではなく躊躇や不安を口にする者も少なくない。そこで本研究では,転院に関する不安を明らかにするため,転院予定患者9名とすでに転院した患者10名に半構成的面接を実施し,質的帰納的に分析した。その結果,転院前,転院後の患者に共通して見られたパターンとして,<転院についての思い>は,自分の身体への自信の程度と,<ここは良いけど向こうはどうか>という他施設に対する不安の程度に関係していることが明らかになった。転院前の患者で,がんなどのため自分の身体に自信がなく,他施設の医療や看護に不信感を抱いている者は,転院を「嫌だ」と述べ,<不安への対処>として「抵抗する」という対処法を用いていた。同様に転院後の患者も腎不全以外の疾患をもつ者は,転院を「追い出された」と捉え,今なお憤りは続いているようであった。一方,転院前後の患者の語りを比較した結果,転院の準備性については違いが見られた。転院後の患者で自分の身体に自信があり,どこで透析を受けても同じであると考えていた5名は,「すぐ出ようと思った」と述べ,積極的に転院の準備をしていた。これに対し,転院前の患者は一人も転院を前向きに検討していなかった。転院前の患者は,転院の説明を受けていたが,その情報はいつ,どこへといった具体性に欠けていたため不安だけが募り,患者は<不安への対処>として「触れない」という対処法を用いていた。今後転院を支援するたあには,転院の基準の明確化とその透明性が重要である。また,看護師は,転院先施設の医療の質に関する正確な情報を提供し,転院が患者にとってどのような意味があるのかを共に考えていく必要がある。
著者
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