オーチャードグラスにおける黒さび病抵抗性の四染色体的遺伝
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概要
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オーチャードグラス,Dactylis glomerata L.は多くの細胞遺伝学的研究から同質四倍体であると推測されている。また,MYERS (1940,1941)は,オーチャードグラスがアルビノについて四染色体的遺伝を行なうことを明らかにした。一方,オーチャードグラスにおける黒さび病抵抗性は感受性に対し優性であって,しかも,単因子による遺伝が想定されている。したがって,この実験の目的は四倍体オーチャードグラスにおける黒さび病抵抗性の遺伝様式を明らかにしようとするものである。38品種からのオーチャードグラスおよそ800個体の中から,黒さび病抵抗性と自殖稔性とについて選抜した一栄養系(32 B 10)は黒さび病菌菌系IIに対し自殖第一代において985の抵抗性個体と26の感受性個体とを生じた。これはほぼ35:1に分離していると考えてよい(0.50<P<0.70)。したがって,もし,この個体が黒さび病抵抗性についてDuplex (AAaa)であったと仮定すると自殖第一代のgenetic arrayはつぎのようになっているはずである。AAAA+8AAAa+18AAaa+8Aaaa+aaaaこれを検するため,黒さび病抵抗性でしかも自殖稔性の高い自殖第一代の65個体について自殖第二代を採種し分離比を調べた。その結果,30個体においては自殖第二代がすべて抵抗性を示した。残りの35個体では自殖第二代に抵抗性個体と感受性個体とが分離し,そのうち24個体ではおよそ35:1,11個体ではおよそ3:1に分離するものとみなされた。前式からはこれらの比が16.7:33.4:14.9(9:18:8)となるはずであるが,得られた値は必ずしも一致しなかった(0.001<P<0.01)。しかし,自殖第二代では供試個体数が少なかった(30〜127個体,通常54個体)ため,分離しないと判定したものの中には,本来,35:1に分離するとみなされるべきものがかなり多数含まれていたと考えられる。そこで,3:1に分離したものの,他の三者の和に対する比,すなわち,(AAAA+AAAa+AAaa):Aaaaを求めると54:11となり,これは理論値50.1:14.9(27:8)にかなりよく適合した(0.20<Pく0.30)。これらのことから,オーチャードグラスにおいては黒さび病抵抗性が優性な一遺伝子により四染色体的に遺伝するものと考えられる。また,黒さび病抵抗性はオーチャードグラスの遺伝機構解明のための数少ないmarkerのひとつとして有望と思われる。
- 日本草地学会の論文
- 1974-04-25
著者
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