乳牛における種々の泌乳段階の乳生産に対する搾乳頻度の影響

概要

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種々の泌乳段階の乳生産に対する搾乳頻度の影響を同一牛の乳区間の乳量を比較することによって調べた。供試牛はホルスタイン種の泌乳牛12頭で,そのうち10頭は初産牛,他の2頭は2産牛であった。実験開始時の泌乳段階は,I群で6-7日,II群では98-117日,III群は127-168日であった。I期は5日間で,左右両乳区とも1日2回搾乳を行った(07.00,21.00)。II期では右乳区は1日2回,左乳区は3回搾乳とし(07.00,14.00,21.00),これを50日間続けた。そしてIII期の10日間では,再び左右両乳区とも1日2回搾乳とした。II期とIIIの左右乳区の乳量は,1期の乳区間の乳量比で補正した。乳区間の乳量の差は,II期の最初の日から生じ,数日間で急速に増した。その後は一般にゆるやかな増加を続けた。乳区間の乳量差は,I群が一番大きく,左右乳区の乳量比はII期の終りまで速い割合で増加した。3回搾乳をしたII期での左乳区の総乳量は,2回搾乳した右乳区のそれより24±5%多かった。これに対して,II群では15±4%,IIIにおいては11±4%しか増加しなかった。しかしながら,II群とIII群における増加も有意なものであった(P<0.01)。また,左右乳区間の乳量差と乳量比は,I群がII群,III群より有意に大きかった(P<0.05)。I期においては各群間の乳量に差がなかった。したがって,II期で生じた群間の差は,実験に用いた牛の泌乳段階の違いに起因するものと考えられる。再び左右両乳区を1日2回搾乳したIII期に入ると,各群とも乳区間の乳量差と乳量比は急激に減少した。とくに,III群においては,乳区間の乳量には有意な差が認められなかった。しかしながら,I群とII群では左乳区の乳量が有意に右乳区の乳量より多かった(P<0.05)。このIII期における左右乳区間の乳量の差は,乳区間の乳腺組織の量の違いによるものと思われる。本研究において,搾乳回数の乳生産に対する効果は,泌乳後期より泌乳初期において著しく大きいことが明らかとなった。このことは搾乳頻度の増加が,泌乳初期間の乳腺細胞の増殖を促し,その乳汁分泌活性を高めるとともに,泌乳のピーク以降に起こる乳腺細胞の退行を抑制しているものと考えられる。
帯広畜産大学の論文
1985-06-25

乳牛における種々の泌乳段階の乳生産に対する搾乳頻度の影響

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