多発性骨髄腫54例の臨床像の特徴と治療法における問題点
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
多発性骨髄腫(MM)54例の臨床像の特徴および治療法の問題点を検討した。年齢は平均63歳,病型分布ではIgGが67%,IgAが24%と大多数を占め,IgD, Bence-Jones, Nonsecretory型が少数認められた。Stage I, IIでGが,Stage IIIではG以外の型が多かったことは,G以外のMMはよりその進行度が早いと考えられた。初診時自覚症をみると,全症例で50%が,Stage IIIで22%が,Stage IIで56%が無自覚だった。有自覚症例で症状発現から診断までは約1.5年と長期間を要した。入院時検査所見で血算値等に異常の見られたのは少数で,Stage IIIでさえも約3分の1程度で,このことは自覚症が出難い事実とともに,その診断を困難にしている要因と考えられた。治療奏功度につき二つの群〔(Single or Double) or (Combination)〕の治療法で検討したところ,両者に差はなかった。生存率につき検討したところ,全体症例の50%生存率は4.9年であり,年齢,骨髄中の形質細胞数による差はなかった。GはAに比し,Stage IはII,IIIに比しその延長が認められたが,治療奏功度,治療法で生存率に差はなかった。以上より,MMは多くの症例が無症状で,検査所見が陰性であることからその診断が遅れ,良好なquality of lifeを望めなくなった時期に始めて診断,治療が行われている事が分かった。治療法では,特に進行例では従来行われていたmelphalan, prednisolone療法と多剤併用療法の間に奏功度,生存率の両面にわたって差がないのが判明した。従来の考えでは病期の進行していない病態では,無治療で観察し骨痛,病的骨折,貧血などの臨床症状が具現化してから治療するとしているが,それでは遅すぎ,インターフェロンなどのtumor genesisの恐れのない薬剤を早期に使用すべきと考えられた。ステージの進んだ症例に対しては,インターフェロンを従来の化学療法に加えるなど新たな対応策が必要と考えられた。今後老人検診などを通じより早期に診断し,quality of lifeを妨げる病変が出現する以前に治療を行うべきと考えられた。
- 1993-12-01
著者
-
井関 徹
千葉大学医学部附属病院輸血部
-
大藤 正雄
千葉大学医学部内科学第一講座
-
高相 豊太郎
清水厚生
-
後藤 茂正
千葉大学医学部第一内科
-
米満 博
千葉大学医学部臨床検査医学
-
井関 徹
千葉大学医学部内科学第一講座
-
後藤 茂正
千大
-
大藤 正雄
千葉大学医学部第一内科
-
大藤 正雄
千葉大学 第一内科
-
近藤 春樹
清水厚生病院
-
高相 豊太郎
清水厚生病院
-
大藤 正雄
千葉大学
-
米満 博
千葉大学臨床検査学講座
-
近藤 春樹
清水厚生病院内科
-
大藤 正雄
千葉大学医学部三論内科
関連論文
- 重症虚血肢に対する再生医療の現状
- 32. MALT lymphomaの1例(第1059回千葉医学会例会・第2回呼吸器内科例会(第16回呼吸器内科同門会))
- 食道へ穿孔した胸部大動脈瘤の1例
- 25.びまん性肝疾患における超音波診断(第638回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 共通の免疫グロブリン遺伝子再構成バンドを認めた, 多発性骨髄腫と非Hodgkinリンパ腫を合併した1例
- 母児ともに救命しえた妊娠36週HELLP症候群の1症例 : 緊急帝王切開にて胎児を救命し術後肝不全,腎不全,DIC,腹膜炎および急性C型肝炎を併発し重篤な経過をとった症例
- 食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法に伴った門脈血行動態の変化に関する研究 - 特に再発との関連について -
- Ligase Chain Reaction (LCR) 法を用いた結核菌群DNA検出試薬の臨床的検討
- 4.巨核芽球性急性転化をきたした慢性骨髄性白血病(第743回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 7. Multiple Lymphomatous Polyposisを伴ったMantle Cell Lymphomaの2症例(第965回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 1. 染色体転座t(8;14)(q24;q32)を伴い肝,脾に多発腫瘤を有したびまん性大細胞型リンパ腫の1例(第951回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 10. IFN-αによる多発性骨髄腫寛解維持の試み(第933回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 9. 各種悪性腫瘍(難治例,再発例)に対する塩酸イリノテカン(CPT-11)を中心とした化学療法についての検討(第933回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 8. 末梢血幹細胞移植術を施行した造血器悪性腫瘍,固形癌24例の検討(第933回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 7. 悪性リンパ腫と固型癌に対する末梢血幹細胞移植併用超大量化学療法(第951回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- All-trans retinoic acid 治療が奏功した急性前骨髄球性白血病合併妊娠の1例
- 5. ECMOを施行したRh(-)の横隔膜ヘルニアの1例(第20回日本小児人工臓器研究会)
- 34.当院における3年間の閉塞性黄疸の検討(第861回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 5.造血器疾患に対するG-CSFの有用性についての検討(第861回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 9.動脈閉塞を合併した本態性血小板血症の1例(第761回 千葉医学会例会・第1回 内科教室同門会例会)
- 膵石灰化からみた慢性膵炎の診断と病態に関する研究
- 膵癌診断における造形X線CTの有用性に関する臨床的研究 : 特に腫瘤形成型膵炎との鑑別および小膵癌診断のための新たなCT所見の検討
- 26. Budd-Chiari症候群に合併した肝細胞癌の1例(第724回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 9.チオプロニンによる薬剤性肝障害を合併した全身性アミロイドーシスの1例(第724回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 13.外傷性胆道出血の1例(第702回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 17.重症ルポイド型肝炎の2症例(第678回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 子宮頸部扁平上皮癌におけるHPV-DNAの局在
- 4)超音波断層画像による肝硬変のパターン情報抽出の一方法(〔画像通信システム研究会 画像処理・画像応用研究会〕合同)
- 子宮頸部病変におけるHPV-DNAの局在と組織学的所見
- HCV抗体(C100-3抗体, N-14抗体)陽性者の長期追跡調査による肝障害ならびに無症候性キャリアについて-集団検診で明らかにされたHCV高浸淫地区での検討-
- 千葉大学東洋医学自由講座開講60周年記念座談会
- 各種疾患におけるPAIgGの特異性と臨床的有用性
- 4.各種血液,肝疾患(特に血小板減少性)におけるPAIgG値の診断的意義とその変動(第841回千葉医学会例会,第1内科教室同門会例会)
- 14.胆嚢アデノミオマトーシスの臨床的検討(第815回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 12.腹部ガーゼオーマの3症例(第815回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 32.先天性総胆管拡張症に合併した早期胆嚢癌の1例(第801回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 27.肝細胞癌と混合型肝癌の合併した1例(第801回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 8.内視鏡的マイクロ波凝固療法の有用法(第801回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- シII-C.肝・膵・胆の吸引細胞診 : 早期癌診断へのアプローチ(肝,胆,膵領域癌の細胞診-採取法から見た早期診野のアプローチ, シンポジウム(II), 第26回日本臨床細胞学会学術集会)
- 6.線状潰瘍胃カメラ撮影上の問題点について(第384回千葉医学会,三輪内科例会)
- 中耳滲出液細胞診により再発を認めた急性前骨髄球性白血病の2例
- 多様化する造血幹細胞移植:その方法と特徴 (焦点 臍帯血移植の現在)
- 病態生理の理解に役立つ! 患者指導に役立つ! よくわかる 疾患のハナシ(24)(最終回)貧血
- 多発性骨髄腫54例の臨床像の特徴と治療法における問題点
- 悪性貧血における各種検査値の変動とそれらの有用性
- ラット肝細胞におけるビタミンB_結合蛋白の取り込みについて : 第40回大会研究発表要旨
- Elastase による内因子 : Cobalamin 受容体の変性作用について : 日本ビタミン学会 : 第39回大会研究発表要旨
- Ara-C少量療法により47XY,+8trisomyの減少したMDSの1症例
- 2-II-4 Micro dU test,リンパ球dU testおよび骨髄dU testの特性について(第38回大会研究発表要旨,日本ビタミン学会)
- 3.周期性好中球減少症の1例(第724回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- ヒトTranscobalaminII及びRタンパクの精製・純化とそれらに対する抗血清の作成 : 一般研究発表要旨
- 3.高ガンマグロブリン血症をきたした胸腺腫瘍の1例 : Plasma cell type of Castleman's lymphoma(第702回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 19.胸部X線上多発性円形陰影を呈した全身膿瘍の1例(第698回 千葉医学会例会・第18回 肺癌研究施設例会)
- 42.反覆性心室頻拍を呈した-過性QT延長症候群の1例(第696回千葉医学会例会・第二内科例会)
- 3.多発性骨髄腫の2症例(第678回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 23.好酸球増多を伴った肝蛭症の1例(第677回千葉医学会例会・第17回肺癌研究施設例会)
- 肝細胞癌のMRI診断 : 診断能と信号パターンの検討
- 11.内視鏡的治療により排石しえた肝内胆石症の1例(第743回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 6. 同一対象の毎月検便に於けるShigella, Arizona, Bethesda-Ballerup検索成績(第337回千葉医学会例会(臨床))
- ベンゾイルチオコリンを用いた血清コリンエステラーゼ活性測定の紫外部検出試薬の開発と応用
- ラット肝細胞によるビタミンB_結合タンパクの摂取とそれらの受容体の局在
- 胆嚢胆石症のESWL治療後長期経過観察による胆石再発に関する研究
- リニア電子走査式穿刺用探触子による超音波映像下臓器穿刺(話題)
- 3. 長期顕微鏡的血尿を経過し不明熱を契機に腎生検にて診断した結節性動脈炎(第951回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 26.肝細胞癌に対する門脈塞栓術の治療経験(第761回 千葉医学会例会・第1回 内科教室同門会例会)
- 17.粘液産生膵癌の1例(第761回 千葉医学会例会・第1回 内科教室同門会例会)
- 13.胆道鏡下マイクロ波照射による胆汁ドレナージの試み一大口径チューブによる内瘻化(第761回 千葉医学会例会・第1回 内科教室同門会例会)
- 29.当院における食道静脈瘤の治療成績 : 時にPTO-EIS併用療法の有用性(第743回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 12.胆石様発作を繰り返した胆管癌の1例(第743回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 超音波カラードプラ法による肝細胞癌門脈腫瘍塞栓の診断ならびに病態に関する研究
- 赤血球増加症の造血機構
- 1.慢性骨髄増殖性症候群における血小板機能に関する研究(昭和60年度猪之鼻奨学会研究補助金による研究報告書)
- 胆嚢胆石体外衝撃波破砕療法における治療効果の予測因子に関する研究
- 鉄吸収に関する実験的ならびに臨床的研究
- 29.肝癌に対するTAE-TPE併用療法の臨床的および組織学的検討(第781回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 26.肝腫瘍におけるパルス・ドプラ法の臨床的有用性について(第781回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 19.大口径チューブによる経皮的胆道内瘻法の長期的効果について(第781回 千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 胃潰瘍を思わせた寄生性幼線虫移行症の2症例について
- 特別講演 1 肝・胆・膵疾患の画像診断と病理所見(第38回日本消化器外科学会総会)
- 肝内結石の診断
- 1.超音波リニア電子スキャン,における臓器穿刺用探触子の開発とその応用による肝・胆道・膵癌の早期診断と治療(昭和57年度猪之鼻奨学会研究補助金報告書)
- 46. 胆嚢癌が疑われた形質細胞腫の1例(第898回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 5. 神経症状として再発したマクログロブリン血症の1例(第898回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- サルコイドーシスに合併しダナゾール療法が有効であった自己免疫性溶血性貧血
- 超音波診断の実際 : 消化器系領域(第57回千葉医学会学術大会・第26回千葉県医師会学術大会・第19回日医医学講座連合大会)
- 日本輸血・細胞治療学会による「輸血業務に関する総合的アンケート調査」における細胞治療に用いる細胞の採取, 処理, 保管に関する2008年の現状
- 放射性ヨード標識Rose Bengal応用による肝臓病態診断の基礎的並びに臨床的研究
- 13.清水市における非A非B型急性肝炎について(第638回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 22.リニヤ電子走査超音波によるびまん性肝疾患の胆嚢像の検討(第617回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 21.腹部超音波検査1994例について(第617回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- (7)肝内胆石症
- 22.当院における過去3年間のPTC-D症例の検討(第602回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 21.膵の血管造影例について(第602回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 13.肝炎多発が疑われる地区の症例について(第585回千葉医学会例会・第1内科教室同門会例会)
- 2)当地に於て経験せるアンモニアガス中毒について(第368回千葉医学会例会,三輪内科例会)
- 21.肝門部悪性腫瘍のPTC. ERCP腹部血管造影法による診断について : 腹部血管法による診断能を中心として(第569回千葉医学会例会・第1内科学教室同門会例会)
- 肺結核治療における副腎皮質ホルモン併用の実験的並びに臨床的研究
- 胆管乳頭腫の1治験例
- Development and Application of the Serum Cholinesterase Activity by Ultra-Violet Detection Method Using Benzylthiocholine as Substrate
- Accessment of Enzymatic Creatinine Determination Methods with High Performance Liquid Chromatography as a Reference Method