自己評価に関係する諸要因の検討 : 特に肯定的・否定的自己の方向づけと関係して
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概要
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これまで多くの研究者が,自己評価による「自己」を,他の変数との関係で研究してきた。これらの研究は,自己評価の機能を通して,行動の理解と予測に役立てようとするところに意図があったと思われる。確かに「自己」の操作的定義を,これら他の変数との関係で研究していこうとする傾向は,心理学の研究領域においても指摘される。究極的には自己評価と社会的行動を表現する何らかの指標や基準との関係を問題にしようとしてきた。本研究は,基本的には,従属変数としての「自己の方向づけ」-肯定的あるいは否定的な自己-が,どのような客観的な要因によって規定されるのかという目的のために行なわれた。その問題点は以下の2点である。1.個人が,肯定的あるいは否定的な自己評価をするのはなぜか,どのような要因が自己の方向づけに影響をおよぼしているのか,2.特定の個人が,自己評価をした場合,かれの自己は肯定的であるのか,否定的であるのかを判別するため,どのような変数で処理すればよいのか,以上の問題点のために,われわれは,30項目からなるパーソナルな質問調査紙を作成した。この質問紙は,大阪に居住する7才から13才までの小学校児童579名に施行された。ただし,この調査用紙を作成するため,いくつかの手続きがとられ,またこの質問項目についての客観性の検討がなされている。しかし基本的には,この調査用紙は「肯定的,あるいは否定的な自己」と,それを規定するであろうと思われる諸要因から構成されたものである。研究結果は,問題点(1)については,「肯定的・否定的自己」と他の28の独立変数との偏相関係数を求めたところ,第3表の示す通りである。特に効果のある諸要因として,21.社会的承認への欲求程度,20.学業成績に対する評価,6.容貌についての評価,16.旅行の行程範囲,26.神経質の程度,3.健康状態,1.年令 であることが,理解された。問題点(2)については,肯定的自己と否定的自己を判別するために効果的な変数によって判別分析を行なった(第5表)その結果,28.の変数の中,12の変数が,自己評価の肯定的否定的の方向を規定する有効な要因であることが理解された。列挙すれば,20.学業成績に対する評価,6.容貌についての評価,21.社会的承認への欲求,10.言葉使いについての評価,3.健康状態,16.旅行の行程範囲,26.神経質の程度,15.友人の数,9.服装についての評価,25.初対面での羞恥程度,22.動物(犬・猫)に対する愛護感,11.睡眠状態,17.一日の平均TV視聴量 の以上である。
- 1972-10-02
著者
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