巻牛利用乳牛牧場における繁殖障害の発生とその治療成績

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長期の周年巻牛繁殖を実施している大規模乳牛牧場において, 1968〜83年における繁殖障害の発生とその治療成績を調査した.のべ6,571回の検診の結果, 妊娠陽性29.8%, 疑陽性6.1%, 陰性46.0%, 繁殖障害18.1%となった.陰性が多いのは巻牛繁殖による交配月日不詳のため, 生殖器は正常ながら妊娠所見がなお得られない例を含むからである.繁殖障害1,213例の内訳は, 卵巣機能不全62.1%, 卵胞のう腫11.3%, 黄体のう腫3.4%, 黄体遺残3.4%, 子宮疾患19.8%であった.産次別では初産牛が他よりやや多く発生し, 6産以上で増加した.産次別の分娩間隔への影響は, いずれも年1産の範囲に入り, 差がなかった.しかし各疾患ごとの分娩間隔を見ると, 1983年7月の在籍牛108頭の総平均349日に対し, 卵巣機能不全410日, 卵胞のう腫426日, 黄体のう腫510日, 黄体遺残398日, 子宮疾患480日となり, いずれもかなり延長した.卵巣機能不全の治療にはPMSが多用され, 治癒率は56.5%であった.ビタミン剤投与では64.7%の治癒率が得られた.処置群561例の治癒率は平均58.5%となり, 無処置193例の43.5%より高かった.卵巣機能不全の中には, 流産予防例を除いて, 81例の早期妊娠例が含まれた.卵胞のう腫の治癒率は, 卵胞破砕で100%, 破砕と他の併用で, 93.8%と高く, ついでHCG75%, GnRH60%となった.うち14例(10.2%)が妊娠中であった.黄体のう腫と黄体遺残に対しては, 用手除去, PGF_<2α>, HCGなどが用いられ, 全体の治癒率はそれぞれ62.5%と68.7%になった.子宮疾患の治療には薬液注入や子宮洗浄が用いられ, 治癒率は68.8%と高く, 無処置の28.9%を大きく上まわった.本研究の結果, 繁殖障害の種類や発生数には他の乳牛牧場と大差はなかった.しかし人工授精と異なり, 交配月日不詳により, 108例もの多数の牛が繁殖障害と診断され, うち72例が何らかの治療を受けた.これらの牛は妊娠を継続したが, 他の多数の潜在的な早期胚死滅を生じている可能性が強い.本研究では, 子宮疾患に対する治療効果は明白であったが, 卵巣疾患ではホルモン剤と他のビタミン剤や栄養改善との差がそう大きくなかった.このことから育成牛と経産牛の適切な飼養管理, 定期的で正確な繁殖検診の重要性がうかがわれた.
鹿児島大学の論文
1990-03-15

巻牛利用乳牛牧場における繁殖障害の発生とその治療成績

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