ポンカン(Citrus reticulata Blanco)果実の品質向上に関する研究
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概要
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栽培技術の改善を通じてポンカン果実の品質向上を図るために, まず第一に, ポンカンの果実品質の時期別推移を明らかにした.第二に, 果実品質に及ぼす栽培技術の効果を明らかにし, 果実品質低下防止, 果実品質向上策について検討した.第三に, 施設栽培での果実品質について, 露地栽培と比較しながら検討を加え, 果実品質を向上させる方策を見出した.得られた結果は以下のとおりである.1.樹上および貯蔵中の果実品質の時期別変化ポンカン果実の発育中の呼吸量やエチレン発生量の変化はほとんどなかった.鹿児島市におけるポンカンの果実肥大, 滴定酸含量の減少は12月中旬にはほぼ停止するが, 果皮着色の指標である色差計のa値はそれより約10日遅れて一定値になり, 糖度は終始増加し続けた.香川県では, 果実重量は12月初旬に最高値に達し, 色差計のa値からみた着色は1〜2月にはほぼ一定値に近づいた.果汁中の糖度は樹上では漸増し, 滴定酸含量は, 8,9月から11月にかけて急激に減少した後漸減し, 12月以降にはほぼ一定値になった.以上から, 呼吸量, エチレン発生量, 果実重量, 果皮の着色, 糖度はポンカンの成熟期および収穫期の判定の指標とはなりにくいものと考えられた.滴定酸含量は, 現在までの調査の結果, 唯一成熟期判定の指標になり得るものと考えられた.しかし, 滴定酸含量は気温などの環境条件によって大きく影響を受けるため, 収穫や出荷は味覚に最も関与する糖や酸の含量から総合的に判定すべきである.この点に注意して判断すると, ポンカンでは1月以降になると, 高品質果実が出荷できることが認められた.次に, 慣行的に成熟判定の指標として用いられている要素以外の成分についても成熟に伴う変化を調査し, 熟度判定の指標として用いようと試みた.果実の成熟に伴う果汁のエタノール含量の変化を調査した結果, エタノール含量を生理的成熟期の指標に用いることはできないこと, エタノール含量は生理的過熟の結果として増加することが認められた.果汁の組成糖は, 果糖, ブドウ糖, ショ糖の3中性糖であり, 成熟が進展するにつれてショ糖の含量が著しく高まり, 果汁中には糖はショ糖の形でプールされることが認められた.ブドウ糖と果糖(果糖+未知の成分)含量は終始低く, 成熟に伴ってほとんど変化しない.ショ糖の含量が著しく高くなるのは, 10月から11月の間であり, この時期からポンカン果実は, 急速に成熟過程に入ることが明らかであった.しかし, 糖度と同様, ショ糖含量はこの時期以降も増加し続けるため, ショ糖含量を生理的成熟期および収穫期の基準に使うことは困難であると考えられた.果汁の有機酸組成はグルタミン酸, グルクロン酸, ピログルタミン酸, 乳酸, 酢酸, ピルビン酸, リンゴ酸, クエン酸, コハク酸, イソクエン酸およびα-ケトグルタル酸の11種類であったが, 果汁中有機酸組成はクエン酸が終始5〜9割を占め, ついでリンゴ酸が多かった.クエン酸含量および総有機酸含量は, 果実が未熟な8月から9月にかけて増加すること, その後は11月および12月にかけて急激に減少し, それ以降は徐々に減少した.リンゴ酸は未熟果に多く, 樹上では果実の成熟に伴って減少するが, 貯蔵後期には再び増加することが認められた.果汁中アミノ酸類の組成としてアスパラギン, グルタミンの2種類のアミド, アスパラギン酸, スレオニン, セリン, グルタミン酸, プロリン, グリシン, アラニン, シスチン, バリン, メチオニン, イソロイシン, ロイシン, チロシン, フェニルアラニン, γ-アミノ酪酸, リジン, ヒスチジン, アルギニンの18種類のアミノ酸が存在することが認められた.果実の成熟に伴ってプロリン, γ-アミノ酪酸, アラニン, フェニルアラニン, アルギニンなどの含量が顕著に増加し, アスパラギン, グルタミン, アスパラギン酸, グルタミン酸などの含量が減少することが明らかになった.2.果実品質の変動ポンカンの樹冠内では, 果実の多くは相対照度80%以上の樹冠の外周部に分布すること, 着色や酸含量による果実品質の差異が大きいことが認められた.ポンカンでは, 着色良好な果実は糖度が高く, 糖度の高い果実は酸含量が高いこと, 果梗枝が大きいと果実重も大きくなるが, そのような果実では糖度と酸含量が低いことが明らかであった.また, 樹冠の外周ほど, 着色良好で糖度が高い果実が生産できること, 着果位置が高いほど果実は大きく, 着色, 糖度, 酸含量からみた果実品質が良くなること, 南側の果実で糖度と酸含量が高いことも明らかであった.3.栽培管理と果実品質エスレル(Ethephon : 2-chloroethylphosphonic acid)の散布はポンカン果実の着色を促進し, 着色を基準とした場合の収穫を1〜2週間ほど早くすること, エスレルの処理では果実内部の成熟は促進されず, 糖度, 滴定酸含量, エタノール含量は変化しないこと, エスレルの散布は西南暖地では果肉先熟現象を回避する有効な手段であり, 実用化
- 鹿児島大学の論文
- 1989-03-15
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