桜島の土壌に関する研究 : I.東桜島地区の土壌について
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概要
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1960年10月以来, 桜島における東桜島地区の土壌調査を行つて土壌断面形態, 理化学的性質を明らかにした.その成績の概要は次の如くである.1.土壌断面形態と分布東桜島の土壌は桜島基底旧熔岩と有史以後流出した新期熔岩との上に火山噴火による抛出物が堆積し, このものの風化物によつて構成されたものである.これら抛出物の熔岩上における堆積様式の相違から東桜島地区に18の土壌統を設定した.こゝに土壌統及びこれらの分布を示すと次の如くである.すなわち, 有村統 : 古里, 有村, 高免地区.湯之2統, 同3統, 同4統 : 湯之地区.湯之5統 : 持木, 野尻地区.湯之6統, 野尻統 : 野尻地区.である.これらの土壌統の東桜島における分布図を各地区毎に示した.2.火山抛出物の堆積様式と熔岩の噴出時期桜島噴火によつて抛出された火山灰砂及び浮石礫の熔岩上における堆積様式, ことに浮石礫層の有無, その数及び層の厚さなどから上記の土壌統を6つの群に類別した.すなわち, Group Iは安永噴出の厚い浮石礫層を1つ持つている.Group IIは安永及び大正噴出の2つの厚い浮石礫層を持つている.Group IIIは1つの厚い浮石礫層と1つの薄い浮石礫層とを持つている.前者は安永噴出のものであり, 後者は大正噴出のものである.Group IVは安永及び大正噴出の2つの薄い浮石礫層を持つている.Group Vは1つの薄い大正噴出の浮石礫層を持つている.Group VIは浮石礫層を持たない.これらの各Groupの分布は噴出時期別熔岩の分布と密接な関係がある.Group I, II, III及びVIは桜島基底旧熔岩地域に, Group IVは文明熔岩地域に, Group Vは安永熔岩地域に分布している.以上の結果から筆者らは浮石礫の堆積様式と桜島の噴火様式とからその下部に埋没している熔岩の流出時期を区別することができた.そして桜島の東北部地域の基底旧熔岩, 文明熔岩及び安永熔岩の分布を明らかにした.3.土壌の理学的組成東桜島地区の土壌は噴火口から近い関係で一般に粒子の大きい砂質土であるが, 地域により, また噴出時期によつて相違がみられる.すなわち, 浮石礫層を持つている土壌統に属しているものの表層土(耕地では作土層となつている)は大正噴火の火山灰砂が主で, これに昭和の降灰が混つている比較的新しい材料からできているが, 浮石礫層を持たない土壌統に属している土壌の表層土は新しい降灰の影響の少ない火山灰砂の風化土であつてその大部分が大正噴火以前の古い噴出物からなつている.安永噴出の浮石礫層の直下にある埋没土はさらに古い時代の噴出物である.これらについて土性を比較すると, 浮石礫層を持つている土壌の表層土は浮石礫にとみ, 粘土分の極めて少ない砂土である.浮石礫層を持たない土壌の表層土は礫は少なく, 砂は細砂が多く, 粘土分も前者に比べて顕著に多い.土性は細砂壌土である.東桜島地区で最も粒子の細い火山灰からなつている湯之1統に属している土壌の表層土は礫がさらに少なく, 細砂が多く, 粘土分も顕著に多く, 土性は細砂壌土である.この下層土は殆んど礫を含まず, 粗砂が少なく細砂が顕著に多く, 粘土分は表層土よりさらに多い.土性は細砂壌土である.安永噴出の浮石礫層の直上にあつて大正噴出の浮石礫層の直下にある火山灰砂の風化土(埋没土)は礫が少なく, 細砂が著しく多いが粘土分は顕著に少ない.しかし, 安永噴出の浮石礫層の直下の埋没土は礫が殆んどなく, 細砂が著しく多く, 粘土含量は以上のいずれに比べても最も多い.この埋没土の組成は湯之1統の下層土と似ている.土性は細砂壌土である.5.浮石礫層の礫の粒径浮石礫の粒径は噴出源からの距離に反比例するが, 噴火の規模の大小によつても相違する.浮石礫層の中の礫の粒径について調査した結果によると, 安永浮石礫層の礫の粒径は有村, 塩屋ケ元, 宇土, 浦ノ前, 園山及び高免にあるものはいずれもその粒の大きさには大差がなく, 大粒のものが大部分を占めている.しかし, 大正浮石礫層中の礫は塩屋ケ元, 長崎鼻地域にあるものは大粒のものが優勢であるが, 宇土, 浦ノ前, 園山, 湯ノ尻, 高免と北にいくに従つて小粒のものが優勢となつている.塩屋ケ元地区のものは粒径1cm以上の大粒のものが6〜7割を占めているが, これから以北の地区のものは0.5cm以下の粒径のものが8割を占めている.6.土壌の化学的性質化学的性質についての成績を浮石礫層のある土壌の表層土, それを持たない土壌の表層土, 湯之1統の土壌の表層土及び安永浮石礫層の直下の埋没土などについてみると, (1)土壌の腐植含量は浮石礫層を持つたものの表層土が最も少なく, 浮石礫層のないものの表層土, 湯之1統の表層土, 安永浮石礫層直下の埋没土の順に大きい.すなわち, 噴出時代の新しいものほど腐植含量は少ない.これは粘土含量と比例している.(2)土壌の反応は埋没土が弱酸性である他はいずれも同程度にやゝ強い酸性を示している.
- 1964-03-25
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