南西諸島の土壌に関する研究 : 2.奄美大島及び徳之島の土壌の一般理化学的性質について
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概要
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亜熱帯湿潤気候地帯にある奄美群島の主要な島である奄美大島, 徳之島, 沖永良部島, 喜界島及び与論島の5つの島の土壌について1962年以来調査研究を行っているが, この報告はこれらの島の内奄美大島及び徳之島の2つの島について地質母材を異にする土壌すなわち, 国頭礫層, 琉球石灰岩(珊瑚石灰岩), 古生層及び火成岩として花崗岩及び輝緑岩などに由来する土壌の土壌断面調査並びに一般理化学的性質についての研究成績である.以下, 成績の概要を述べると次の如くである.1.土壌断面調査各島とも表層(A層)部は腐植の集積によって灰褐色または暗褐色を呈し, その下層(B層)は腐植の含量が激減し, そのため, 泥灰岩土壌の灰味色を示すのを除いて他の殆んどの母材に由来する土壌は赤褐色, 黄褐色, 黄赤色, または赤色などの赤味色の強い土色を示し, 赤黄色土の性格を示している.表層は粒状または果粒状の粗鬆な構造を示しているが, 下層土の多くは密で硬度が大きく, 可塑性及び粘性が強く, 塊状構造を示している.2.理学的組成各島とも各母材に由来する土壌は粘土にとみ, 土性はLiCまたはHCで, 殆んどHCである.表層土よりその直下の層に粘土にとむものが多い.3.化学的性質1)反応 琉球石灰岩地帯の土壌及び石灰質の砂を混入した土壌の反応は中性または微アルカリ性で, ことに琉球石灰岩地帯の土壌の多くは下層まで高いpHを示している.その他の母材すなわち, 国頭礫層, 古生層及び火成岩に由来する土壌はいずれもpH値が小さく極く強い酸性を示している.置換酸度及び加水酸度は反応と同じ関係にある.泥灰岩に由来する土壌は前両群のほぼ中間の値を示しやや酸性を示している.2)置換性塩基 琉球石灰岩地帯の土壌は塩基含量が高く, その飽和度は80〜90%それ以上を示し, 塩基の内, 石灰がその大部分を占め, その飽和度は70%前後である.徳之島の泥灰岩に由来する土壌は前者に次で塩基の量が多く, その飽和度は83%, 石灰飽和度は30%でやや小さいが, この土壌は著しく苦土にとみ, その含量は6.6m.e.その飽和度は45%で石灰より多い.これは徳之島の泥灰岩土壌の顕著な特徴といえる.その他の母材に由来する土壌の置換性塩基の含量は両島の平均飽和度として27.6%, 石灰飽和度が7%で極めて小さい.3)塩基置換容量 置換容量は表層土では腐植と粘土に, 下層土では粘土に, それらの質と量に支配されるが, 両島の総平均は15m.e.である.これは琉球列島の西表島, 石垣島及び宮古島の土壌のそれに比べるとやや大きい.表層土の置換容量は下層土のそれに比べるとやや大きい値を示している.4)腐植及び炭素率 腐植の集積量は概して少なく, その範囲は両島を通じて1.5〜5.0%で3%以下のものが多い.腐植含量と母材との間には一定の傾向は認められないが, 未耕地土壌に多く, 既耕地土壌に少ない傾向がみられる.炭素率は両島の総平均で表層土が12,その直下の層が9,さらに下層に行くに従って小さくなっている.5)燐酸吸収係数と有効燐酸 燐酸吸収係数の範囲は300〜1000で, 両島の総平均は600である.母材別に一定の傾向はみられない.有効燐酸は一般に少ない.耕地土壌の表層土(作土)にやや多く含まれているがその下層土並びに未耕地土壌には殆んど含まれていない.4.以上の如く, 奄美大島及び徳之島の土壌ことに将来開拓される地区の土壌は殆んどが強酸性, 塩基欠乏並びに重粘質など不良な理化学的性質を持っているので, 将来農地開発の際はまず土壌の不良性の改良が必要である.
- 鹿児島大学の論文
- 1966-12-26
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