南西諸島の土壌に関する研究 : 7.奄美群島の土壌の腐植について
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概要
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奄美群島の, 母材を異にする土壌の腐植について研究し, 以下の結果を得た.1.腐植集積量は一般に少なく, 表層土でも3%以下の土壌が多い.炭素率は9〜12程度で, 腐植酸部の割合(PQ)は小で, 腐植酸部の腐植化度もまた低い.2.一般には, 腐植集積量の多い土壌ほど, 炭素率, PQも大で腐植酸の腐植化度も高い.3.塩基飽和度特に石灰飽和度の非常に高い土壌を除外すると, 腐植集積量は, 巨視的には気候条件に支配され, 腐植集積についてのJENNYの式を適用し得る.4.地目, 標高によって腐植の量と質は異なる.林地では腐植の集積量が最も多く, 草地がこれに次ぎ, 耕地では最も少ない.標高の高い場所では腐植集積量は多いが, 炭素率は, 腐植の量が多い割には小である.5.粘土含量 : 35〜55%程度の土壌には, 腐植が多く集積している.喜界島の泥灰岩に由来し, モンモリロナイト型鉱物(モンモリロナイト, バイデライト)をかなり含む土壌では, モンモリロナイトに富む, 沖縄島の"ジャーガル"とは異なり, 腐植酸の腐植化度は低い.炭素率 : 約12,PQ : 45程度の腐植の集積に対して, 層間にAlを有しないバーミキュライトの存在はプラスに作用すると思われる.6.土壌反応が微酸性〜酸性である土壌では, 土壌が酸性化し, 置換性二価塩基含量が減少し, 活性鉄, ばん土含量が多くなるとともに, 腐植集積量は増加し, 炭素率, PQも大になり腐植酸の腐植化度もまた高くなる.土性が適当で, かつ, 塩基飽和度が100%に近い土壌のPQは大であることが多い.また, 塩基飽和度が非常に高い土壌で, モンモリロナイトを全く含まないにもかかわらず, 炭素率, PQが非常に大で, 腐植酸の腐植化度も高く, かつ, 腐植集積量もかなり多い土壌も存在する.7.腐植酸の吸収スペクトルでは, B型腐植酸の形態を示す土壌が多く, A型腐植酸の存在する土壌は僅かである.酸性土壌の下層土には, P型腐植酸が存在する.中〜微アルカリ性土壌には, P型腐植酸はほとんど認め得ない.8.同一試抗点の下層土は, 表層土よりも腐植集積量が少なく, 炭素率, PQも小で, NaOH抽出部のΔlogkは大でRFは小であるにもかかわらず, 腐植酸部の腐植化度は表層土よりも高い場合が多い.
- 鹿児島大学の論文
- 1970-03-25
著者
-
大塚 紘雄
鹿児島県農政部
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小林 嵩
前鹿児島大学:(現)南九州大学
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品川 昭夫
Laboratory of Soil Science
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大塚 紘雄
Laboratory of Soil Science
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岩下 徹
Laboratory of Soil Science
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佐野 憲二
Laboratory of Soil Science
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佐野 憲二
鹿児島大農
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