自閉児の発達段階と行動特徴 : 段階IIから段階IIIへ移行の事例
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概要
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自閉発達障害を持つH児(男)の事例において,自閉障害の知的発達の段階IIから段階IIIへの移行とそれに伴う行動特徴の変化が検討された。資料として3歳6ヵ月から5歳7ヵ月の間に4回実施された発達相談時の発達検査結果,観察記録,母親と保育所保母からの報告が用いられた。発達診断は可逆操作の高次化における階層一段階理論に依っている。H児は段階IIに約2年間あって段階IIIへ移行した。発達の高次化に伴う発達の層化現象の消長は,これまでの報告が再確認された。自閉障害の行動特徴は,段階IIから段階IIIへの移行と対応して著しい改善を示した。クレーン現象とエコラリアの消去,社会的模倣の増加,言語理解と会話の成立,集団参加と自発的他者への関わり等があった。しかし,知的発達と共に,数字と文字等への固執,目ばたきや頭ふり等の身体的常同行動の増加もあった。基本的生活習慣の自立過程において,大便排泄の奇癖が習慣化した。また,描画の発達に健常児と類似の過程と,人物画を描かず形の模写に偏る,障害特有の過程が示唆された。このように,自閉障害の特徴は,発達の高次化により変容することが,段階IIから段階IIIの移行過程において示された。
- 1996-03-30
著者
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