タテボシガイの分類学的位置とその分布
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概要
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イシガイとタテボシガイを殻の形態で区別することは難しいが、幼生の色はイシガイでは褐色、タテボシガイでは乳白色と異なり、両種を完全に区別することができる。そこで、この形質に基づいて種の同定を行った。まず、これまで種の同定によく用いられてきた右殻擬主歯の厚さを比較した。その結果、平均値で見るとタテボシガイの方がイシガイより厚いが、その変異幅の重なりは大きく、この形質で両種を完全に区別することはできなかった。また、実験的に雌を他種の生息場所に移して飼育すると、交雑が起こった。しかし、イシガイの雌は褐色の幼生を、タテボシガイの雌は乳白色の幼生を産出した。琵琶湖周辺における分布をみると、両種が共存する場所はなく、タテボシガイは近江盆地にのみ、イシガイはそれ以外の地域に分布することが明らかになった。以上の結果から、タテボシガイは独立した種として扱うよりも、イシガイの近江盆地固有亜種とした方がよいと結論した。
- 日本貝類学会の論文
- 1997-04-30
著者
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