コハクオナジマイマイ Bradybaena pellucida における色帯の遺伝
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概要
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コハクオナジマイマイBradybaena pellucidaの自然集団には、殻に色帯のある型(0200)と無帯の型(0000)が多型的に存在することが知られている。本研究は、コハクオナジマイマイにおける色帯の遺伝様式を決定することを目的として行った。未交尾個体の交配を行うために、高知県須崎市浦の内下中山において、未成熟個体を採集した。この際、黄色無帯(YU)、黄色有帯(YS)、茶色無帯(BU)、および茶色有帯(BS)の4型を採集し、コハクオナジマイマイの自然集団には色帯のほかに殻の地色にも黄色と茶色の不連続変異が存在することを確認した。採集した幼貝が成熟した後、3組のYUおよび3組のYSを交配した。その結果、YUどうしの交配では次世代にYUのみが生じたのに対し、2組のYS交配では、いずれの場合もYSとYUが3対1の比率で分離した。残り1組のYSからはYSのみが生じた。これらの交配結果により、コハクオナジマイマイにおける色帯変異は遺伝的であり、有帯は無帯に対して優性であることが証明された。すなわち、コハクオナジマイマイの色帯は、その同胞種と考えられるオナジマイマイB. similarisの色帯と同様の様式で遺伝することが確認された。
- 日本貝類学会の論文
- 1993-06-30
著者
-
浅見 崇比呂
信州大・理・生物
-
福田 宏
山口貝類研究談話会
-
浅見 崇比呂
東京都立立川短期大学
-
福田 宏
東京都立大学理学部自然史講座
-
冨山 清升
国立環境研究所野生生物保全研究チーム
-
浅見 崇比呂
信州大 理
-
冨山 清升
鹿児島大学理工学研究科地球環境科学専攻
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